新世代CEOの本棚

今時の社長ってどんな本読んでんの?
ということで、ちょこちょこネットにあがっていた『新世代CEOの本棚』を読んでみたので、その感想をメモしておきます。

ここでは10人の社長が出てくるのですが、誰がどんな本を読んでいるか?はもちろん、なぜ本を読んでいるのか?という読書の意味についても整理できたため、その点もしっかり書いておこうと思います。

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目次とコンテンツ概要

新世代CEOの本棚目次

#01 堀江貴文 – 「ノーベル賞科学者のプロデュース術」を学ぶ
#02 森川亮 – 自分の脳を「だます」本で、判断力を研ぎ澄ます
#03 朝倉祐介 – 組織の「グチャグチャ」は歴史本で疑似体験
#04 佐藤航陽 – 「感情」「経済」「テクノロジー」で未来を俯瞰
#05 出雲充 – ドラゴンボール「仙豆」から、ユーグレナを着想
#06 迫俊亮 – 「とりつかれたような読書」から見えてきたもの
#07 石川康晴 – 倒産危機を救ってくれた、松下幸之助の『商売心得帖』
#08 仲暁子 – 「採用」「解雇」の二大難問に答えてくれた本
#09 孫泰蔵 – 『ワンピース』は、チーム経営の最高の教科書
#10 佐渡島庸平 – 「観察力」が9割、「想像力」が1割

本の内容はタイトル通り、今注目を集めるベンチャー企業やテクノロジー企業の社長が普段どんな本を読んでいるのか、を紹介するというもの。スタートアップ界隈やテクノロジー系メディアを見ていると、ちらほら見聞きする社長さんが取り上げられています。

ホリエモンこと堀江貴文氏やLINE元社長森川氏、Fintechで俄然注目を集めている佐藤氏や、ミドリムシ研究を事業化したユーグレナ出雲氏など。その他、Softbank孫正義氏の弟孫泰蔵氏も取り上げられ、非常に濃いメンツが揃った本書。

それぞれが個性的で、事業内容も異なる中、「CEO・社長」という共通点から見えてくる読書に対する姿勢や取り組み方には、ある一定の共通項がみてとれます。
ただ読書を楽しむ、というだけでない、社長だからこその学び方・活かし方を知ることができるのが本書の特徴です。
また、本の紹介がメインと思いきや、各社長の思考やバックボーンにまで踏み込んだ内容がまた興味深く、なぜその人がその本を選んだのかという背景が理解できる点も、他の紹介本にはない違った印象を抱かせます。

組織のトップに立つ人や、これから立とうとしている人にとっては、非常に示唆に富む内容で、本ってそういう見方もできるんだ!と改めて感じさせてくれます。

ページ数は253ページと軽く、むしろ気になる人のパートだけをつまみ読みするだけでもおもしろいですし、何かオススメの本ないかな?という時に手に取る程度でもいいかもしれません。

新世代CEOが読書をする、3つの目的

全体を読み終えふと感じたことですが、社長として本と向き合うのは大まかに3つの目的があるからだ、と感じました。

1、これからの社会や未来を見通すため
2、社内外での良好な人間関係構築や組織のあり方を学ぶため
3、日々の経営判断を適切に下せるようになるため

まず上記であげたように、様々なバックグラウンドを持ち、様々な本を読む社長であっても、すべからく共通項としてあげられるのは、「読書をする目的が明確である」という点です。

将来を見通しビジョンを掲げ、それを実現する組織をつくり、日々の決断で事業を動かす。こうした仕事は、社長に期待されている典型的な業務ですが、その価値を最大化し効率的に日々こなしていくために、必要な知識・ヒントを本から得ているようです。

1、これからの社会や未来を見通すため

この激動の時代に、各社CEOはどのように未来を見通そうとしているのか。
堀江氏は、まず社会や世の中の仕組みを徹底的に理解することで、各業種や分野で何が起こったら他にどのような影響が出るか?などのつながりを知っておくことが大事だとしています。
特に、このインターネットの時代には、社会は暗号で成り立っているとし、サイモン・シン著の『暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで』は鉄板だとのこと。

また、メタップス社長佐藤氏は、そもそも今の時代は変化のスピードがあまりにも早過ぎるため、タイミングを読んで先回りする方法以外に他社との差別化は難しいとしています。
ではどう先回りするのか。未来予測の方法として佐藤氏は3つのベクトルをあげています。それが「人間の感情」「経済(おカネ)」、そして「テクノロジー」です。
「人間の感情」については、ジョージ・ソロスやウォーレン・バフェット、田中角栄などの伝記を読み、「経済(おカネ)」は、資本主義やマネーの歴史をおさらいした本を。
そして、未来のベースとなる「テクノロジー」は、『テクニウム』といったテクノロジーの歴史を広い視野で俯瞰した書籍から、最近の人工知能ブームを踏まえ、レイ・カーツワイルの『ポスト・ヒューマン誕生』などから、この先100年の見取り図を手にしているそうです。

2、社内外での良好な人間関係構築や組織のあり方を学ぶため

組織における問題で1番つらく大変なのは「雇用」と「解雇」についてだと、ウォンテッドリーの仲氏は言います。
いかに組織に合った人材を雇用し、ダメな場合解雇するか。また、友人や知り合いを雇ってもいいのかなど、悩みは尽きない中で大きなヒントを与えてくれたのが、Googleの『ワーク・ルールズ!』だそうです。

新しい働き方を提唱するGoogleが、いかに採用・育成・評価のシステムをつくっているのかが包み隠さず語られており、あまりに具体的なノウハウまで公開されているため、そこまでしていいのかと感じたほどだといいます。

また、チームビルディングの最高の教科書として、今や世界的マンガとなった『ワンピース』をあげたのが孫泰蔵氏。
主人公のルフィが「海賊王になる」という目標を持ち、自分には無い能力を持った仲間を、正面からぶつかり説得し信頼を築いていく様は、まさにベンチャー企業が成功するプロセスだとしています。

3、日々の経営判断を適切に下せるようになるため

その瞬間瞬間で決断を迫られる経営者にとって、意思決定の精度をいかに上げていくかという課題は、常につきまといます。
その1つの解決策として、過去の成功例・失敗例を事前に学んでおくというのはよく知られるところ。有名な経営者の伝記や企業の盛衰を描いたレポ、そして歴史物の書籍などは、ほぼ全ての社長が取り上げています。

現在スタンフォード大学で客員研究員をしている朝倉氏も、ITベンチャーの先行事例として『社長失格』をあげ、先駆者たちの失敗体験を自分のものにしておくべきとしています。
また、リアルなケースをもとにストーリー形式で学べる、三枝匡氏の『V字回復の経営』『戦略プロフェッショナル』シリーズ3部作や、『幕末史 (新潮文庫)』『蒼天航路 (モーニングコミックス)』といった歴史書も幅広く取り上げ、似たような場面に遭遇した際の指針に役立てているそうです。

信頼できる人から勧められた本を読む

こうして次々とあげられる良書・名作本とは、どのようにして巡りあうものなのか。
その選書の仕方についても、各人ばらばらで共通点は無さそうでしたが、1つあるとすれば「信頼している方から勧められた本」を読んでいるという点があげられます。

身近な社長仲間や尊敬するメンターに勧められた本は素直に読み、特に自分の置かれている状況をよく知っている人かどうか、という点がポイントだそうな。

また堀江氏などは、書評サイト「HONZ」でキュレーターをしている成毛眞氏の書評は参考になるとして、ネット上のサービスを活用している方もいます。

流行りの本を漠然と読んだり、いきなり分厚い専門書から勉強しようとするより、まずは周りの人に相談しながらオススメを教えてもらうといいかもしれません。
現状を打破するヒントを得られるばかりか、紹介してもらった本を通じてさらに関係性を深められる可能性もあります。

読書で賢くなろうとも、社長はバカじゃなきゃ務まらない

読書をして知識をつけることそれ自体は、なにも間違ったことではありません。
ただ、それが社長となった場合、1つ注意しなければいけないことがあると、メタップス佐藤氏は指摘します。

興味の赴くままにいろいろな分野の本を読んでいますが、一つだけ懸念しているのは、知識量が増えすぎると、全部相対的に見えてしまって、経営者としてはパッションを持ちにくくなるという面があることです。

情熱を持って周りを巻き込んでいく中で、あれも知っているこれも知っていると、周囲の人間の意見全てを理解できてしまう。どちらの言い分にも一理あるとなると、主張できなくなり動けなくなってしまう、というのは考えものだということです。

物わかりが良すぎると人を巻き込むことができない、だからこそスティーブ・ジョブズの「Stay hungry, stay foolish」という言葉も取り上げ、バカでも勘違いでも自分の信じていることを主張しながら、人がついてきてくれる程度に要所を外さない・成果を出すことが必要であるとしています。

まとめ

本の読み方から活用の仕方まで、社長個々で本当に色々な実践があるんだと確認できた本でした。

堀江氏のように、1回読んだ本は二度と読まなかったり、出雲氏のように『小倉昌男 経営学』『魔法のラーメン発明物語』を何度も読み返してみたり。はたまた、本を意識的に読む期間を決めて、「3ヶ月間、1日1冊感想をツイートする」を実践した孫泰蔵氏がいたりと、本の読み方なんて決してこれと決まった型があるものでないということに気付かされます。

そんなことを意識する前に、まずは自分で本を読む目的をしっかり決めて、何を学ぼうとしているのか、最終的に学んだことをアウトプットできるくらい読み込むことが大切だなと。

常に「今の」自分に必要なことは何かを考えて、行動の根拠にしていきたいとも思います。