紛争地帯の兵士
本日今朝方、悼ましいニュースが飛び込んできました。
アメリカで起こった9.11以降最悪のテロ事件が、フランスのパリで起こった模様。

現時点での死者数は100名を超すとされており、その凄惨さが伺い知れます。実行犯はISのメンバーとされ、計画的な犯行として現在も捜査が進められています。

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中々事件を報道しない日本メディアへの批判

そんな現地の情報をいち早く知りたいと、テレビに目を向けた方も多いはず。しかし、実際に日本のテレビ局ではこの大事件がほとんど報道されず、触れても数分程度の扱いとなり、視聴者から不満の声も上がっています。

著名な方々も、マスコミの報道姿勢に対し以下のようなツイートで批判。

日本のメディアは全く放送しない、情報量が少ない、何やってるんだ、という主旨の内容。言わんとしていることはわかるし、マスコミに対する問題意識は常にあるからこそ確かに納得。

ただ、少し表面的な批判が行き過ぎている感が否めず一方的なものも多かったため、少しはマスコミ側の考えがどうなっているのか調べてみようかなと。すると、twitter上で以下の記事を発見。

テロリズムとメディア報道 ~英米におけるテロ報道に関する制度の考察(2) | 日本大学大学院新聞学研究科

こちらは、テロや災害などメディアの危機管理を専門にする福田 充氏が書いた記事です。
メディアがなぜテロ報道を積極的に行わないか、という理由がダイレクトに書かれており、以下で参考になった箇所を紹介していきたいと思います。

社会不安の醸成と勢力の拡大

この記事の中で引用されているジョージタウン大学教授のブルース・ホフマンは、テロリズムの特徴について以下のように述べています。

「すべてのテロリスト・グループに共通する特徴がある。目的なく行動するものは誰もいないということだ。どのグループも、ひとつの行動で最大の宣伝効果を得ようとし、また力を見せつけることで、人を思いのまま動かし、目的を達成しようとする」(Hoffman, 1998)

「テロリズム、テロリスト=無差別に人を殺し、モノを奪う行為・集団」
というこれまでに思っていた認識を改めさせる発言です。
人を殺したり、破壊行為を繰り返すというのはテロの一部でしかなく、あくまでその目的はその影響によって人々を惑わすこと。

さらに、テロリズムの専門家であるポール・ウィルキンソン氏はより詳しく以下4つに分けてその目的を説明しています。

①テロリストの行為を幅広く宣伝し、ターゲットとする集団の中に極度の恐怖心を起こさせること

②テロリストの目的の正当性や勝利の確実性について強調することにより、一般市民や国際社会の中に支援者を増やすこと

③テロに対抗するためのすべての施策は本質的に逆効果であると示唆することによって、政府や治安当局によるテロ対策を妨害すること

④現実のまたは潜在的な支持者を動員し、扇動すること、それによってメンバーを増やし、資金を集め、次のテロ活動を準備すること

なるほどなー、とつい感心してしまう内容です。
これまでテロについて考える機会があまり無かったこともありますが、こうした意図を学ぶと、改めて見方が変わってきます。

特に②に関して、どうしてそんなことが支援者増につながるのかと普通は考えますが、実際社会に不満を持っていたり、自身の現状に満足していなかったりする人間はどこにでも存在するわけで、そうした人達をターゲットに徐々に取り込んでいくのだなと。
また、この事件をネタに政権批判をする人も多くみられるなど、着実にこれらの目的が達成されていることに驚きを感じます。

今回の一連の事件、また日本での騒動を通して、一概にじゃあ報道しなくていいっしょ!とまではいかないものの、過度に報道する必要もないことがわかります。

報道が少ない背景にこうした事情があることは、情報の受け手として知っておくべきことです。
21世紀にあり、いかなるテロ事件がどこで起きるかわからない中、テロに対して無知であることはあまりに無防備というもの。

社会を不安に陥れ、自分たちのやりやすいように世論を誘導しながら、組織を拡大させていく。そうした狙いがあることをしっかり認識し、情報に惑わされないようにしていきましょう。

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