チンパンジー、霊長類について
「SWITCHインタビュー 達人達(たち)」視聴メモ。今回は、京都大学総長の山極壽一氏と探検家が憧れる探検家関野吉晴氏の対談です。

人類の不思議から共同体・家族について、また戦争とは何なのかといった幅広いテーマをざっくばらんに語り合います。研究者と探検家、一見全く別の道を進む両者も、1つの分野・専門を突き進むという点で興味深い共通点を見出していきます。

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霊長類と先住民から現代人を知る

SWITCHインタビュー 達人達(たち) アンコール「山極壽一×関野吉晴」

野生のゴリラに魅せられアフリカに通って35年、霊長類から人間を考えてきた山極と、人類の足跡をたどる5万3千kmの「グレート・ジャーニー」はじめ、壮大なスケールの旅に人生を捧げてきた関野。二人の目から現代社会のヒトを見てみると…。発情をコントロールできるのは人間の女性だけ?男が働かなくても威張るのは“肉”をとってくるから?人間が戦争をするのは言葉のせい?意外な事実の数々に、世界が違って見えてくる!

視聴メモ

● 霊長類と人間の生活様式、共同体の違いから
→「共同保育」と「食物の共有」が人間を人間たらしめた

– 共同保育
・複数の家族が集まり、近隣関係が良好に保たれている場所でないと家族が成り立たない
・人間は近隣関係を成り立たせるために乱交しないというルールを設けた
→ 人間の男にとって、尊厳、メンツを守るという事はとても大事
→ 他人に自分の女をとられることは尊厳に関わること
→ こうした基本的なルールから、社会性、共同体を作り上げていった

・人間以外の霊長類はメスが発情しないとオスも発情しない
→ 霊長類のメスは発情すると見た目でわかるため、勝手にオスがよってきて生殖行為を行う
・人間の女性だけが発情をコントロールできる
→ いつ発情しているかわからないから、アピールで着飾る(装飾具などを身に付ける など)必要が出てきたのではないか?

– 食物の共有
・チンパンジーは肉(食料)を取ってきても仲間内で分けたりしない
・人間はみんなで分け合う
→ みんなに持っていくとみんなが讃えて笑顔をくれる
→ 尊厳が保たれ、その家族も認められる
→ そのため男は肉を取ってくる以外、家では何もしない
・人間は非常に高い共感力を持つようになった
→ 共感力が人間と霊長類を分けている

戦争について
・何故人間は戦うのか?
→ これも尊厳と女性の関係
→ 女性を奪われたら尊厳が最も傷つけられる

・女性関係などトラブルの際はどのように対処するのか
→ 先住民の場合、基本は話し合いから始まり、のっけから戦ったり殺し合うことはしない
→ 戦いや殺し合いは楽な手段だが、種や民族の存続を考えるとその後に残る禍根は絶対にあってはならない
→ 儀式的な殴り合いを通し、お互い白黒付けずに両者を立てた形でお開きにする

・霊長類もメンツの保ち合いをする
→ ゴリラなども当事者同士で解決するのでなく、それを仲裁するポジションがいる

– 戦争の原因
・戦争の原因は「土地」であるというシンポジウムがあったが、霊長類学者はそうとは考えない
→ 先住民はそもそも「土地」を奪い合ったりしない
→ 狩猟採集は経済行為であり、それらを保存できるようになってから、その土地になる実を奪い合うようになった

・問題なのは財産、所有物を持ち始めた頃から
農耕の出現や定住が戦争の原因になったのではないか
→ 集約農業で穀物を作るようになってから?(主食の確保?)

・人間は敵を作らなければアイデンティティーを保てなくなってきたのではないか

現代人について
・鉄を5kg作るのに松材3トンが必要であり、鉄の歴史は森林伐採の歴史ともされる
→ なぜそんな大変なこと、手間のかかることを人間はしようとしたのか
→ 霊長類はそんなことしない、すぐ諦めてしまう
・「待つこと」と「諦めないこと」はすごく人間的なもの(霊長類はやらない)
→ 今の時代この2つができない人が増えてきているのではないk

・「時間」というものを、現在の価値観ではなく未来の価値観としてみている
→ 未来への投資だと考えて今を疎かにしていないか

・効率的にじゃないことをするメリットは「気付き」にある
→ 今まで思ってもみなかったことへの「気付き」は非常に重要

– その他、人間について
・コロンブスなどを除き、人類の前人未到を果たしたのは開拓精神のある人間ではなく、迫害されて住む場所を追い出された弱小の民族だったのではないか
→ 人類発祥とされるアフリカ大陸から、最遠の南アメリカ大陸南部には病弱・貧弱な民族の末裔が住んでいる
→ 赤道付近の温暖な地帯に人々は定住し、争いに敗れた民族が流れ着いた?

・そんな弱小の民族がどのように寒冷な地方で生きていったか
→ 必須道具4種。マッチ、ナイフ、釣り道具、そして裁縫道具が特に重宝した
→ 寒い地帯でも、衣類・皮を縫い合わせることによって温かい格好ができる、針の発明はすごい

まとめ

もう観ていておもしろ過ぎて、終始笑っているか頷いているかというレベルで濃い内容だったと思います。

霊長類、特にゴリラを専門としてきた山極氏の考えは興味深く、人間がどのようにして社会性を育んできたのかを考える際、重要な示唆を与えてくれています。
さすが人間が人の間に生きる生物だな、と再確認。

先住民との比較で人間を語った関野氏の意見も、人は本来どういった生き物かという点を明らかにしています。
メンツや相手を立てるといった行為が先住民の間でもなされており、共同体を維持するため有効に機能している点などは特に驚きです。

こうしたルーツや比較を通して人、または人類への理解を深められるということは、今後も頭に入れておきたいと思います。