互いに学び合っている様子

あなたの進路は人工知能が決める ≪ WIRED.jp : http://wired.jp/2015/01/12/next-world-04/

これまたパンチの効いた事例が登場しました。
入試や定期試験のデータから適性や能力を判断し、その人に合った授業カリキュラムを組んでくれる人工知能が登場したそうです。すでに、アメリカのメンフィス大学で導入され、このシステムのお陰で、学生はよりよい成績を得られる可能性の高い講義を選べるというもの。

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単位取得が至上命題な、海外の大学生

入学よりも、卒業が難しいとされる海外の大学ですが、自分がどの講義を選べば難なく単位を取れるのかという問題は、かなり関心度の高いものになっています。
アメリカの私立大学の場合、年間の学費が400万円前後にのぼるケースも多く、下手に留年しようものならその負担が1年分余計にかかってしまうためです。

また、大学での成績は就職活動にもダイレクトに影響します。できるだけよい成績を取ることが自身のキャリアにも直接繋がってくるため、履修登録は非常に重要なファクターとなっているのです。

そんな中、今回のケースでは、人工知能が自分の能力、適性に合わせて履修登録やカリキュラムを最適化してくれます。自分に有益かもわからない講義を取り、結局身に付かなかったあげく落第してしまう。そんなリスクを背負わずに、取得可能性の高い講義に集中できるこの仕組みは、学生にとって理想的な学習環境の1つなのかもしれません。
(そういった環境が本当に学生のためになるのか、という議論もありますが、その点については一旦置いておきます。)

大学は人工知能とどう向き合うか

人とロボットが向き合う
今後このような人工知能を筆頭に、新たなテクノロジーが自身の職場や仕事のパートナーとして導入されるケースは増えてくるはずです。膨大な情報を瞬時に処理し、最適解を導き出せる機械に対し、人や組織はどう対応し付き合っていくべきなのでしょうか。

人工知能と人との関係

まずメンフィス大学では、この人工知能システムを利用する際、ある工夫をしています。
それは、あえてシステムだけでなく「専任のアドバイザー」をつけて、学生とのコミュニケーションを発生させているという点です。

人工知能をただ利用するというだけなら、アドバイザーを介さずとも、学生がマニュアルなどを参照し1人で利用できる方法はあるかと思います。
しかし、そこにアドバイザーを配置し、学生と人工知能をつなぐことで、学生のニーズと人工知能の出力を的確にマッチングさせる仕組みが出来上がるのです。

学生も取得しやすい講義を取りたい反面、自身の興味ある分野を学びたいという欲求もあります。そうしたすり合わせや、人工知能がフォローし切れない学生の補足情報をアドバイザーが考慮することで、より精度の高い出力が可能です。

人と人、face-to-faceの会話から汲み取れる僅かな情報を拾い、その場その場で対応するには、こうした人工知能単体ではなく、あえて人を介在させるという仕組みが効果的です。
万能な人工知能も、その使い方を人がうまく最適化してやることで、(各人にとって)より有益なアウトプットを共創する一例となっています。

大学とテクノロジーが生み出す価値

人工知能をより活かすための人。そこから浮かび上がる人工知能には無い”人の価値”。人工知能を大学で活用する本当の価値はそこにあるのではないでしょうか。

“人の価値”を再確認すること、そしてそれを教育に活かし、”人の価値”を知る学生を育てること。テクノロジー偏重にならないバランスの取れた人間教育は、最先端のテクノロジーを実際に活用してみることから判明するのかもしれません。

昨今、MOOC(大規模オンライン教育サービス)の登場もあり、教育現場にテクノロジーが進出し始めています。しかし、大学という場で注目されるべきは、いつの時代もシステムやテクノロジーでなく、そこで成長し社会に新たな活力を与える学生達です。
大学はそういった人材を育てられる数少ない場所であることを自覚し、うまくテクノロジーを活かす仕組みを作っていくべきだと考えます。