3DCGsaya正面写真
発表されるやいなや大きな注目を集めた一枚の写真。
こちら一見ごく普通の女子校生の画像ですが、実はこの被写体が3DCG(3Dコンピューターグラフィックス)で作られたものだとしたら皆さんはどう感じるでしょうか。

「saya(さや)」と名付けられたこの3DCGは、夫婦でCGアートの創作活動を行っている石川晃之氏と石川友香氏が手がけたもの。
あまりのリアルさに、「かわいい!」「誰?」「どこのアイドル?」といったコメントが多く寄せられ、CGにも関わらず実在する一存在として受け入れられているような反応が見受けられます。
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「saya」は不気味の谷を超える存在となるか

不気味の谷
ロボットの外見が極めて人間に近づいた時、それまでの感情から一転して嫌悪感や不気味さを感じてしまう。そんな時、皆さんは「不気味の谷に”落ちた”」状態とされます。
これまで製作されてきたヒト型ロボットには、HONDAのASIMO、ソフトバンクのPepper、高橋智隆氏デザインのrobiなどが有名です。

そんなロボット達も実はこの不気味の谷を避けるため、あえて造形を人間に近づけないマスコット的なデザインが採用されているのは周知の事実。
中途半端な造形は、かえって利用者に嫌悪や忌避の感情を与えかねないため、あえて親近感が湧くようデフォルメされた外見となっているのです。

しかし、今回登場した「saya」は、限りなく人間の女子校生に近付けたにも関わらず、嫌悪されるどころかむしろ好印象・好評価を得ています。
これは、見方によればこれまでヒト型ロボットの課題とされていた「不気味の谷」現象を超えた唯一の存在になったといえるかもしれません。

不自然さや得も言われぬ不気味な感情は影を潜め、単純に「かわいい」「誰?」といった本来人に向けて発せられるであろうコメントを引き出した時点で、不気味の谷現象を克服したと一部で考える事ができます。

プロジェクトの今後について製作者の石川友香氏は、まだ研究段階のもので着ている服や各部位(パーツ)の質感を更に高め、ショートムービーも作成していきたいとのこと。

▶ 石川晃之氏&石川友香氏が運営する公式HPはコチラから

コミュニケーションの未来は?

今回の「saya」の事例が示すことは、将来、人とヒト型ロボットのコミュニケーションにおいて、事務的なやり取りではなく、感情のこもったリアルなコミュニケーションが実現するしれないという点です。

Pepperやrobiにしても、人とのコミュニケーションを売りにしながら、実際は人が相手をヒト型ロボットと認識して、それに意識的に相対するというスタンスが見受けられます。
質問する際、人側がロボットに認識してもらおうとはっきりとした声で話しかけたり、意図的に目を合わせようと振る舞う行為がそれにあたります。

これは、まだ人がコミュニケーションロボットに慣れていないからという見方もできる一方で、”それら”との自然なコミュニケーションの実現には限界があると感じさせる出来事でもあります。

逆に、「saya」のような外見のコミュニケーションロボットができれば、受け答えに若干の齟齬が生じても、それ自体1つの個性(「ちょっと頭の弱い子かな」「アホかわいいな」など)として受け入れられ許容される可能性もあります。

完璧なコミュニケーションの実現か、気兼ねない自然なやり取りの実現か。

ロボットというと、人にはない完璧さや超人的な役割を期待されがちですが、日常にとけこむ人と変わらない自然なロボットという方向性もまた、その可能性を広げる1つの道かもしれません。

不自然なくありのままの感情を持って接した瞬間、不気味の谷ならぬ人間とロボットという垣根を超え、互いが一生命体として相対し共存するという社会が訪れる気もします。


photo credit:”Wpdms fh uncanny valley“. Licensed under GFDL via Wikipedia.