トヨタPrius
トヨタ自動車が、アメリカのマサチューセッツ工科大学とスタンフォード大学と連携して、人工知能(AI)研究を進めていくことになりました。
自動車×人工知能と言われ浮かぶのが、Googleの自動運転車。自動車業界のイノベーションとして、その開発が日夜取り組まれていますが、どうやらトヨタはそちらではない様子。

Toyotaが“自動運転車”ではなく“完全無事故車”の研究開発に$50Mを投じ、研究主幹にDARPAのGill Pratt博士を招聘 | TechCrunch Japan

“自動運転車”ではなく”完全無事故車”。
先端テクノロジーを新型車開発でなく、既存技術と組み合わせた安全性の向上に活かすあたり、カイゼンを積み重ねてきたトヨタらしい方針と言えます。

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“完全無事故車”と聞いて、気になるポイントをいくつかあげてみます。

・完全無事故車が事故を起こした場合は?
・完全無事故車はまず不可能、どこまで完全を目指すのか?
・自動車×テクノロジーの未来は?

完全無事故車が事故を起こした場合は?

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これは自動運転車でも言われていますが、人工知能を搭載した”完全無事故車”が”事故”を起こした場合についてです。

完全無事故車といえど、この世に”完全”が無い以上まず事故は起こってしまうもの。万が一事故が起きた際の法律や社会的責任についての取り決め・整備が急務となってきています。
弁護士ドットコムでは自動運転車が事故を起こした場合、現状はメーカー責任を問うしかないとしており、メーカーの立場をどう保護していくのか注目です。

運転手がいない「グーグルカー」 事故が起きたときの責任は?(自動運転車と法・上)|弁護士ドットコムニュース

また、一般市民に対してそれらを周知し理解してもらうことも重要になってくるため、研究と同時にその施策も練っていく必要がありそうです。

完全無事故車はまず不可能、どこまで完全を目指すのか?

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モノを作る以上完全を目指すのはもちろんですが、それを実現するのはほぼ不可能。
問題は、完全無事故をどこまで目指すのかという点に絞られます。今ある事故発生率の半減を目指すのか、それとも10%以下まで狙っていくのか。

単に事故を減らす、ということであれば既存の技術だけでも改善はできます。
ただ、完全無事故を目指し事故発生率を10%、5%、1%・・・と減らしていくほど、収穫逓減により費用はかさみ、どんどん効果は出にくくなっていくのもの。
開発費用と効果のバランスをいかに取るか。費用が車の価格に転嫁されてしまっては、全く意味がありません。

世の中全てが完全無事故車になれば、その理想も可能かもしれませんが、運転が好きな人・自分で運転したい人がいる以上難しい。現実的なラインをどこに持ってくるかが問われます。

自動車×テクノロジーの未来は?

自動車×テクノロジー
ソフトフェア開発を軽視してきた遅れを取り戻すための策とも取れる今回の連携。
フォルクスワーゲンやルノーを相手にしていればいい時代から、Googleやテスラを相手にする時代への変化とあって、その重要性を理解していなかった訳ではないと思います。

ただ、有能な国内のソフトフェア開発者を確保できなかったことで、次の一手を打ちあぐねていた感は否めません。自動車×テクノロジーという領域にあって、ソフトウェア開発の力は必須条件。
明らかに後れを取ってしまっているこの領域で、今後の巻き返しに期待したいところです。

単純に考えれば、トヨタの高品質大量生産システムとGoogleのソフトウェア開発が連携できれば、それはそれで面白いのかなとも。
ただこればかりは作れれば良いというものでなく、自動車メーカーの意地もあると思うので、日本・世界を代表する企業として、その意地を是非見せてほしいと思います。

まとめ

自動車開発・イノベーションについては、産業的にも文明的にもどんどん進化して欲しい領域です。ただ、技術発展や利便性・経済性を重視し過ぎて、本当に大切な人の命が軽視されてしまう状況は防がねばなりません。
今回、トヨタがその点をしっかり押さえ、人工知能をあえて完全無事故・更なる安全性に活用するという方針にはとても好感がもてます。

自動車という文明が産み出してしまった負の側面「天然資源(化石燃料)の浪費」と「自動車事故」。
新たな技術革新・イノベーションでこうした問題をいち早く解決して欲しいと思います。


photo credit: Toyota Prius G 2009 via photopin (license)