ユバル・ノア・ハラーリ: 人類の台頭はいかにして起こったか? | TED Talk | TED.com
本日取り上げるTED Talksは、歴史学者のユバル・ノア・ハラーリ氏です。
テーマは「人類の台頭はいかにして起こったか?」というもので、人間と動物との違いに着目し、なぜ人が他の動物・さらには地球の運命をも左右する存在になったのか説明しています。

一見深そうなテーマにみえますが、ユバル氏は人間の持つ個々の力ではなく集団の力に着目し、シンプルでありながら本質的な解答を提示しています。

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他者との協働において柔軟性を持てたか否か

他者との協力
人間は動物と比較する際、つい自分たち人間には動物にはない特別な力・才能を持っていると信じたくなる、またはそう考えがちだとした上で、ユバル氏はそれを否定しています。

人間個々にはそれほどの力はなく、無人島に人間とチンパンジーを放してサバイバルさせたらチンパンジーの方が上手く生き残れると考えており、個々で比較しても意味がない。

重要なのは集団として見た際、人間が「柔軟性を持ち大勢で協働できる生き物」であり、その他多くの動物が「協働したとしても柔軟性に欠けた振る舞いしかできない生き物」であるということです。

そがなぜ可能になったのか。以下、ポイントを箇条書きしまとめてみました。

Talks Points

・人間は「柔軟性を持ち大勢で協働できる生き物」であり、その他動物はそうではない
→蜂やアリなど社会性を持った生き物はいるが、例えばミツバチの巣はひとつの方法で機能しており、不測の事態に対応できる程の柔軟性は持っていない

協働するために必要なコミュニケーションについて
・チンパンジー同士では、相手をどう信頼してよいかの土台がないため、深く複雑なコミュニケーションができない
→1対1でのコミュニケーションは可能だが、情報は一方的であり事実を伝えることだけにしか利用されない(敵が来たから逃げろ、あそこにバナナがあるから取れ など)

・人間は、想像したり架空の物語を作りそれを信じることを通して、共通のルール・価値観を形成しコミュニケーションを行っている
→宗教上の神や天国・地獄を信じることで共通の価値観を共有できたり、法律が人権に対する信念を基本としていたり、紙幣における信頼(ただの紙切れでなく100ドルの価値を持つ事)が共通のルールとして社会に秩序を与えていたりなど
→人間の想像力がそれを可能にし、そうして作られたルール・価値観を前提に複雑なコミュニケーションが成立
(複雑化した社会で、柔軟な対応を迫られる環境にあったからこそ養われたのが柔軟性?)

想像力が生み出した世界について
・人間は二重の現実に生きこの世界をコントロールしている
– 客観的実在の世界:山、川、ライオン、ビル、車など
→実際に物事が存在し、実在しているもので構成されている世界であり、すべての動物(人間含め)がこの世界で生きている
– フィクション(虚構、架空)の世界:国家、お金、法律、神話、宗教など
→人間がこの数世紀に渡り創り出し広めたもので、実在はしないが現実世界に影響を与えている

・現在は、この架空の世界がよりパワーを持つようになり、川や木やライオンなどの実在する生き物の生存は、これら架空の世界の決定や願いにかかっている

思ったこと・疑問点など

人類史において非常に有益なテーマとして取り上げてみましたが、人間と動物を個々で比較するのではなく、集団としての性質や特徴で比較する見方は非常に面白かったと感じました。

普段物事の分析や整理に比較はよく用いられますが、比較する対象を誤ってしまうと望む結果がでなかったり、ミスリードしてしまうことがあり非常に気を使う部分です。

今回のように個々ではなく、集団での比較となると変数や複雑性が増し、分析にもより手間がかかってしまいますが、視野を広げてアタリをつけたり簡単な見通しや仮説を立てたりする際には有用な方法だと思います。

また、これまではっきりと認識していなかった事実として、自分たちが客観的実在世界に生きるだけでなく、自ら創りだした架空の世界に生きているという点に気づけたことも興味深かったです。

確かに法律や国家、お金の概念が一瞬にして無くなったら、一気に無法地帯になってしまうのだろうなと。
人間が自然界にあるものを加工する以外で生み出してきた”概念”。その元となったのが人間の”想像力”ということで、今度はその想像力がどうして人間だけに宿ったのか疑問に残ります。

・想像力が脳の活動に関係して生じたものであれば、脳の作り・容量はどう関係しているのか?
・イルカや象、熊と比べて同じまたはそれより小さい脳を持つ人が、想像力や複雑な思考を可能にするのだとしたら、容量ではなくその作りが問題になるのか?
→今度は、人の脳と動物の脳の作りをざっくり調べてみようかな(ある器官とない器官は?など)

そんなこんな考えながら妄想して、更に理解を深めていけたらと思います。


photo credit: TEDxKL 2013 32 via photopin (license)