国立大学のオンライン講座まとめ

前回に引き続き、今回は西日本にある国立大学の中からJOCW(日本オープンコースウェア)コンソーシアムのメンバーとなっている4校(名古屋大学、大阪大学、京都大学、九州大学)を取り上げてオンライン講座の現状をチェックしていきたいと思います。

【前回記事】
 ・国立大学が提供しているオンライン公開講座「JOCW」まとめ1(北大、筑大、東大、東工大)

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国立大学のJOCW活動レビュー

前回は、教養をもっと手軽に勉強したいとの思いから国立大学のJOCWを調査しましたが、残念ながら正直使えるものはほとんどないということが判明(東大除く)。
今回は反省し、使えそうだから紹介するという体でなく、使えるかどうかをレビューするという体で進めていきます。

名古屋大学

名古屋大学JOCW画面
名大の授業 (NU OCW) : http://ocw.nagoya-u.jp/

まずいきなりなのですが、↑画像の真ん中下あたり赤文字が見えますでしょうか。

「現在、動画コンテンツはInternet Explorer11 とGoogle Chromeには対応しておりません。別のブラウザでお試しください。」

はい、とのことです。これなんのことかイマイチぴんとこない方。普段ネットに繋ぐ際には、ブラウザというソフトを経由して利用するのですが、その代表的ブラウザである「IE11」と「Chrome」では動画が観れないとのことです。
どうりで自分も観られなかった訳ですね。というのも、日本国内のブラウザユーザー比率は直近2015年4月でIE11:約33%、Chrome:約28%となっており、断トツの1・2フィニッシュを決めている状況。

正直言ってユーザーの過半数が使っているブラウザに対応していないという時点で、コンテンツを観てもらうつもりはないと言っているのと取られかねません。
このページの下には、せっかくノーベル物理学賞を受賞された天野教授の特別インタビューも映像配信されているのですが、もちろん「IE11」と「Chrome」では視聴不可です。

せめてもの救いは、iPhoneが普及しているお陰で「Safari」というブラウザを気軽に使えることだけでしょうか。iPhoneユーザーの方は是非そちらからご確認ください。

【参考】
WebブラウザシェアランキングTOP10[日本国内・世界] | 株式会社 ウェブレッジ : https://webrage.jp/mobile/data/pc_browser_share.html

大阪大学

大阪大学JOCW画面
大阪大学オープンコースウェアへようこそ — Osaka University Open Course Ware : http://ocw.osaka-u.ac.jp/

大阪大学のOCWは、とてもシンプルで使いやすさで言えば1番無難なサイトになっています。
左サイドメニュー「学部・学科」から学びたい分野を選び、その中のコースから講義資料や動画にアクセスすることが可能です。
また、ヘッド下メニュー「コース一覧」からは、「学部・学科」で用意されている各コースを全て一覧で表示することもできます。大体どんな内容のものがあるか、一通りチェックするには便利なページです。

気になる動画コンテンツですが、残念ながら数的にそんな多くないのが現状です。しかもその数少ない動画も、ほとんどが退任される教授の最終講義を収めたもので、観る側として気軽に何かを学べるというものではありません、残念。
将来、研究者や教授を目指す方であれば、最終講義の様子からどのようにその職を全うしていくか学べるかもしれませんが、ほとんどの方には関係の無いものだと思うため、興味のある方のみオススメです。

ちなみに、理学部の中にノーベル物理学賞を受賞された南部陽一郎先生の特別講演を見つけたので、それだけは是非観ておこうと思います。

京都大学

京都大学JOCW画面
京都大学OCWへ ようこそ — KYOTO-U OPEN COURSEWARE : http://ocw.kyoto-u.ac.jp/ja

京都大学のOCWサイトは、大阪大学と見た目や作りがほぼ同じ構造になっています。ただ、大阪大学よりも情報量やアクセスのしやすさは俄然リードしている感があり、動画も全てではありませんがyoutubeからの埋め込みとなっている点はポイントです。
節々に京大らしさが出ており、好奇心をくすぐられるコンテンツが散見されます。

また、京都大学はケンブリッジ大学やMITが作ったedXというオンライン学習サイトにも講義を公開しています。そこで公開されているコンテンツも、このOCWサイトから視聴することが可能で、中身は英語とハードルは高いですが興味ある方は最先端の講義を受けることができます。

その他、山中伸弥教授によるiPS細胞の研究動画があったり、多岐にわたる分野の資料・ビデオが満遍なく揃っています。東京大学に引けをとらないOCWサイトとして存分に活用したいところです。

九州大学

九州大学JOCW画面
九州大学オープンコースウェア(Kyushu University OpenCourseWare) : http://ocw.kyushu-u.ac.jp/

大阪大学、京都大学に続き、九州大学のOCWもシンプルで使いやすいサイトです。左サイドメニューから学部・学府を選択、その中に用意されている講座・科目から資料にアクセスできます。

懸念点は、情報量やコンテンツ数自体が大阪大学と同程度であまり多い印象は受けないこと。また、動画を試聴する際各講座・科目によって動画再生ソフトがいちいち異なる点はかなりの面倒事です。さらっと確認しただけでRealVideo、WindowsMedia、QuickTimeなどいずれかをインストールせねばならず、片方で対応していたソフトで、もう片方の講座では未対応で視聴できないといったケースもあり、不便極まりない状態です。

せめてもの救いは、九州大学が開設している独自のyoutubeチャンネルから、ある程度動画をチェックすることができるという点です。
実は大阪大学もyoutubeに専用チャンネルを持っていたのですが、ほとんど更新されていなかったため取り上げませんでした。九州大学の方はしっかりと更新されているので、チャンネル登録して普段はyoutube側からアクセスするようにしてもいいと思います。

まとめ

前回の東日本の国立大学と比べたら、まだ西日本の方がよかったのかなぁという印象です。国立大学のOCWから教養を学ぶ、という点においては東京大学と京都大学をメインに活用し、学びやすいもの・興味のあるものから少しずつ学んでいくのがベストだと思います。

そもそもOCWは、外部の人や地域に向けて大学の知を共有するという名目で活動しています。ですが、実際どの大学も情報量や提供方法などほとんど整っていないのが現状です。
各校ともポーズとしてとりあえずやっている・公開だけして社会に貢献していますという体を出したいがため、という印象が拭えず、これ以上国立大学に期待しても意味ないなとも感じました。

少子化が進み、受験生の争奪戦が始まる中、気軽にアクセスできるネットの情報で広く価値を提供していくことは最低限の戦術と思います。国立大学だから大丈夫とあぐらをかいてたら、その内限界がくるのも時間の問題だろうな、と。
世界で評価されていないという事実も、こうした取り組みに表れているのかもしれません。