戦場の兵士
中東で勢力を拡大し続けるイスラム国。最近日に日に報道が増える一方で、ちょっとした疑問も生じるようになってきました。
それがタイトルにある呼称問題。それぞれの呼び方が存在し、一部では国と呼ぶ事が誤解を生むとの見方も出ており、本筋とは別のところで盛り上がったりしています。

確かにその違いについてよくよく考えたこともなかったな、ということで、簡単にそれら呼称について調べてみました。

スポンサードリンク

ISILもISISも組織が自称した名前ではなかった

中東地図
まずそもそもこの組織は、イラクで立ち上がった国際テロ組織アルカイダから派生した組織(分派)であるという点が特徴です。

その分派を率いていた統率者の死亡後、後継者にあたるアブアイユーブ・マスリ氏が2006~7年頃に「イラクのイスラム国(ISI:Islamic State in Iraq)」の創設を発表。この時点では、まだイラクを拠点としたカリフ制国家の設立を目指した呼称であったといえます。

しかしその後勢力の拡大に伴い、国連や一部の報道機関、関係者などが、この組織を「ISIL」や「ISIS」と独自の呼び名で指名。「ISIL」や「ISIS」がISの自称したものではなく、第三者が各々で付けたものだ、という点は誤解を生む一端となっているかと思います。

それぞれの意味は、基本的にISをどの地域まで含めた組織と見るかで分かれており、第三者によって異なります。

ISIL(Islamic State in Iraq and the Levant)

ISIL(Islamic State in Iraq and the Levant)の日本訳は、「イラクとレバントのイスラム国」です。

レバント」とは地中海の東側沿岸地域のことで、イラクとその近隣地域の比較的狭い範囲を指しています。
オバマ米大統領や国連、一部の報道機関が、イラクのみならず国境を超えた国の設立を目論んでいる組織として主に用いている表現です。

ISIS(the Islamic State in Iraq and al-Sham)

ISIS(the Islamic State in Iraq and al-Sham)の日本訳は「イラクとシャムのイスラム国」。

シャム」とはアラビア語で、トルコ、シリア、エジプト、レバノンなどを含んだより広い地域を意味した言葉です。

IS(Islamic State)

ISは「Islamic State」ということで、日本でも馴染みある「イスラム国」の元となったものです。
このISは第三者が名付けたものでなく、組織側が自称している名前でもあります。

以前のISI(イラクのイスラム国)というイラクに限定された名称ではなく、一般的にIS(イスラム国)とすることで、国・地域に囚われない組織を目指していることが伺えます。

どう呼ぼうとイスラム国と言っているのは変わらない

日本では特に「イスラム国」という呼び方が一般化し、一部では国でもない組織を、あたかも国であるように呼称するのはいかがなものか、という批判があります。

ただまとめてみるとわかるように、「ISIL」でも「ISIS」でも、共に「Islamic State」という言葉を含んだ略語であるため、どちらで言っても意味的にそもそも変わらないものだったということがわかります。

ただやはりテレビや新聞などの影響力を考慮すれば、「イスラム国」と言って「国」なんだと素直に受け取ってしまう人がいるかもしれないという状況では、より慎重な表現が求められるのはごもっともだなと。

国という表現は避ける、そしてその他イスラム教信者にあらぬ誤解が広がっているという問題も加味すると、妥当なところで「一部のイスラム過激派(Some Radical Islamists:SRI)」的な表現でいい気がしてきます。

単純に「State = 州」で「イスラム州」とかにすると、紛らわしくてアメリカが怒りそうですかね。んー呼称、難しい。