atama+の今後気になるな。
海外展開も、機関投資家からあったように教育はかなり地域色の強い領域。
他国の教育がどう入っていくかだけど、atama+の場合、教育サービスでもコンテンツじゃなく
あくまで個別最適化の仕… #NewsPicks https://t.co/vqtqAzp1tm— 吉田直弘 (@naohirooo) September 26, 2021
atama+、国内だけでなく海外の機関投資家からも資金調達を成功させたとのこと、すごい。。
今後の展開が気になるところですが、その前に個別最適化学習ってなんだっけと。
なんとなくわかってたつもりな案件、ということで、今回は、同社も提供している個別最適化(適応)学習について、基本的な仕組みについてさらっておこう思います。
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個別最適化学習の仕組み
個別最適化学習は、個々の学習レベルや進度に合わせ、最適なタイミングで最適な教材を提供し、より効率的・効果的な学びを実現する学習のことと言われています。
教育現場でも、これまで続いてきた1対多の教授スタイルから一部転換が図れるとし、注目されている学習スタイルです。
個別に最適な学習を届けるとは?
今回は以下書籍も参考にしながら、概要をまとめていきたいと思います。
個別最適化学習を成り立たせる3つのモデル
個別最適化学習を実現するシステムは、知的学習支援システム(ITS:Intelligent Tutoring Systems)と呼ばれており、主に以下3つのモデルから成り立っています。
1.領域モデル(domain model)
領域モデルとは、「何を教えるか」の部分にあたる学習テーマ(主題)のことを指します。例えば、数学や物理などの教科や、第一次世界大戦勃発の原因に関する知識がそれです。
特にその中でも、算数・数学は単元や各テーマがきちんと構造化されており、システムとして扱いやすいとされています。
2.指導モデル(pedagogy model)
指導モデルは、「どう教えるか」を最適化するために用意されるモデルです。
多くのITSが採用する学習指導法には、インストラクショニスト・アプローチ、発達の最近接領域、挟み込み学習、認知負荷、形成的フィードバックなどがあります。
例えば挟み込み学習は、同じ単元の学習を集中的に行うのではなく、所々で別単元の問題などを混ぜ、記憶の定着を図る指導法であり、生徒の状況や学習レベルに応じて、各指導法が選定されます。
3.学習者モデル(learner model)
個別最適化学習の肝となるのが、この「学習者モデル」です。
ここまで、領域モデルと指導モデルは「何をどう教えるか」のために用意されたものでした。そこに、この「学習者モデル」が加わり、初めて最適化の対象となるモデルに対して全体が機能する、という仕組みです。
「学習者モデル」は、進捗具合や成績だけでなく、後述する学習中の解答状況や操作(画面上のどの部分をクリックしたか、何を入力したか、マウスの速度など)や感情データから成り立ちます。
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まず、上記3つのモデルを元に学習者にとって最適と考えられる教材ができあがり、それを利用者が解答していきます。
そこから学習を重ねることで、新たなデータ(成績、学習中の挙動、感情状態など)が蓄積され、既存の学習者モデルの更新に活かされる流れです。
より精度高く学習者に合った教材や学習方法の提示が継続的になされるフィードバックループができて、最適化が実現するということ。
※学習過程の情報(成績、学習中の挙動、感情状態など)収集をデータキャプチャ。その情報を次の学習に活かすためのフェーズがデータ分析とも言います。以下図参照。
出典:「教育AIが変える21世紀の学び 指導と学習の新たなかたち」 北大路書房 (2020)
※ちなみに上記図「オープン学習者モデル」については、以下書籍から引用の形で記しておきます
オープン学習者モデルの目的は、システムで行われた指導と学習、およびシステムが行った決定を生徒と教師がチェックするために、それらを可視化または顕在化することである。オープン学習者モデルは、生徒に彼らの達成と自分の課題をモニターできるようにすることでメタ認知(meta cognition)を支援したり、教師がクラス全体の文脈において生徒一人ひとりの学び(彼らのアプローチや理解の誤り、学習曲線)をよりよく理解することを可能にしたりする。さらには教師の専門性向上のための方法を示す可能性もある。
個別最適化学習の課題
仕組みがわかったところで、次に課題について調べると、以下2点があがってきました。
ともに、ただ“使えるシステム”を創るだけであれば、さほど支障はなさそうなものの、より精度高く、利用者のニーズに応えていくために今後乗り越えるべき課題に感じます。
(1)明確に定義(構造化)されていない学問領域への対応
「領域モデル」をご紹介した際、システムの扱いやすい領域として算数・数学をあげましたが、その逆に扱いにくい(構造化しにくい)テーマも存在します。
それが、近年重要視されている21世紀型スキルや、明確に定義できない問題(論争の解決、異文化間スキルの獲得、多様性理解など)です。
あくまで学校ですでに学んでいる内容のみであれば問題ありませんが、今後需要の高まるテーマでもあり、どのように領域モデルとして準備していけるかは注目です。
(2)効率的な学びでは身につかない素養
あるテーマを構造化する際、ナレッジグラフ(ナレッジマップ)と呼ばれるデータベースを用いることがあります。
これは、知識の意味的な関係をグラフ構造で表したもので、各テーマのつながりや関連性が整理されています。
例えば「二次関数」でつまづいた学習者が、「二次関数」を解く上でどのテーマ(平方根、因数分解など)の理解を深めればいいのか。ナレッジグラフから、関連するテーマを絞り込み、それをリコメンドすることでより効率的な学びを提供します。
この時、効率的な学びを提供することができる反面、学習者の目標や興味関心といった情報は切り離されて学習は進んでいきます。
そのため、テーマの理解を深めること以外、例えば知的好奇心やモチベーションを高めることは考慮されず、その点を伸ばす効果は期待しにくい性質があります。
テストの点数を上げることに特化しているとも言えますが、探究心を育むことなどは、システムの改良(より多くの個人情報を活用する)や他の手段で身に付けさせることが必要になりそうです。
まとめ
ここまで、個別最適化学習の仕組みや課題を簡単にまとめてみました。
個々の学習者の成績を高めていくために、これ以上ないシステムですが、その一方で、学習テーマの範囲や学びへのモチベーションの部分で、今後期待すべき点も残されています。
1つの学習スタイルとして、どう発展しどのように使えるかは引き続き考えていきたいと思います。