「先に生まれただけの僕」、略して先僕。
放送開始からはや1ヶ月。物語も徐々に盛り上がりをみせていますが、みなさんご覧になられているでしょうか。

▶ 先に生まれただけの僕|日本テレビ : http://www.ntv.co.jp/sakiboku/

櫻井翔さんが演じる敏腕商社マン鳴海涼介(なるみりょうすけ)が、毎年赤字垂れ流しの学校の再建に挑むという本作。
物語の設定上、ずぶの素人が異業界で古い慣習・しきたりを打ち破り、新たなサクセスストーリーを紡ぐか?という、一見ありそうなお話。

放送当初は、学校ものだアクティブ・ラーニングだと、関心ついでの視聴でしたが、どこか回を重ねるにごとに得られる既視感…

あれっ、こういう学校どっかでみたことなかったっけ?

原作はリアルの学校!?ドラマな話がドラマじゃない件!

先日放送された第5話にて、生徒主導の大胆なオープンキャンパスを見事成功させた京明館高校。
ここまで、ドラマだから〜と穿った見方をしながらも、一方で、こんな改革できたらすごいなと、少し現実に目を向けてみた際ふとよぎることが。

ん?こんな話、以前どこかで。

そう思いたち、まず鳴海校長の諸スペックをまとめていくと、、

【鳴海校長】
・上司の失脚により突如左遷されての校長就任
・就任当初の年齢35歳
・教員経験無し(教員免許あり)
・ビジネス的な視点で学校改革

なるほどなるほど、鳴海校長の設定はこんな感じでした。
ここまでは、就任経緯を除いたにしろ、ここ数年で注目されてきた民間人校長がモデルとなったお話と取れなくもない。

ただ、リクルート出身の藤原和博氏や平川理恵氏は有名ですが、年齢は異なりますし、自身の想いがあって自ら校長になった点は、ドラマの鳴海校長とは異なります。

それでは舞台となる学校の方はというと、、

【京明館高校】
・赤字経営(膨大な借金)
・偏差値:44
・学校の雰囲気はゆるい
・不人気校(定員割れ、滑り止め校)
・教員に危機感はなく、意識レベルもバラバラ

改革におあつらえ向きな課題山積校。
少子化による受験生争奪戦の真っ只中、大きなハンデを抱えながらこのような学校での改革事例は無いかー、と思った矢先。
なぜか、人名や学校名ではなく、こちらの動画が頭をよぎることに。

先のオープンキャンパスと相まって、数年前にTwitterで目にした歌う校長先生のいるオープンスクール。ド派手で大胆な様(さま)がどこか被る、と思いきや。。まさにこの学校、校長先生こそがまんまモデルになっているじゃないかと。

それが、長崎県・創成館高校、奥田校長先生です!

ドラマ以上に壮絶だった、当時の創成館高校

なぜそこでピンときたかというと、学生の頃に、大学改革についての卒論を書いていたことに由来します。
事例として、国際教養大学や北九州市立大学を取り上げたのですが、実はその執筆直後に出会った文献「ヤンチャ校長、学校を変える」で、創成館高校を知る機会があったという流れです。

改めてその本を読み返してみると、、
先代の父親から、突如、学校経営を引き継ぐことになった現校長兼理事長の奥田修史(おくだ なおふみ)氏。就任時の年齢は33歳で、教員経験はもちろん無し。
さらに、当時の学校は俗に言う教育困難校であり、偏差値は測定不能のBF(ボーダーフリー)、いじめや傷害、万引きなども日常茶飯事だったそうです。

ドラマの京明館高校が可愛く見えてくるほどの荒れっぷりですが、莫大な借金を抱えていた点もドラマと同じ。
特に、銀行から融資どころか、廃校を勧められるシーンもありましたが、実は本当にあった出来事だったといいます。

番組公式や学校としても、正式な原作やモデル校は提示していませんが、ここまで状況が揃えば十中八九といっていいかもしれません。
試しに、ネットで「先に生まれただけの僕 モデル校」等と入力すると、「創成館高校」という名前もいくつかヒットし、そちらの界隈ではざわついている様子。笑

京明館高校の未来を占う!?創成館高校のその後とは


▶ 創成館高等学校 : http://www.sohseikan.ac.jp/

さて、モデル校が判明?したところで、今後、ドラマの京明館高校はどうなってしまうのか。
そこで、創成館高校の実情が気になるところですが、なんと!創成館高校はその後、奥田校長の改革のもと、大きな変貌を遂げていたのです。

あれだけ荒れていた学校が、この約10年ですっかり落ち着き、さらに県内外から受験生が集まる超人気校へステータスチェンジ。
今でも学校の偏差値自体は高くはないものの、受験倍率は4.7倍。大学進学者率も、以前の4割から7割へと大きく増加していました。

地方の学校でここまで劇的な躍進を遂げたのは、教育関係者であればとんでもないこととわかるかもしれません。

では一体、奥田校長は何をしてこの改革を実現したのか。具体的には、以下のような取り組みがあげられます。

・教員の意識改革
→危機感を持たせるために、学校の財務諸表の見方を直接教えたり、学校の理念に沿わない教員を退職させる
・自分含めた教員の給料カット
→最大で給与を4割減させたこともあり、毎年受験者数が減れば減給するようにしている
・奇抜で大胆な学校説明会やオープンスクールの開催
・教員の質向上に向けた学習環境の整備
→アクティブ・ラーニング等の実施に向け、Find!アクティブラーナーなどのICTツールの導入
・生徒への指導として、まずあいさつの徹底からはじめる
→ただ「あいさつをしろ」というのではなく、あいさつによってどう自分や周囲が変わるかを生徒目線に立って説明
・生徒の夢を実現する独自のキャリア教育プログラム
夢mapフォーサイト手帳の活用により、夢の実現や目標達成を支援
・人間性教育として、「7つの習慣J®」プログラムを実施
→自らより良い学習環境・人間関係を作り出せるように導くプログラムを、長崎県内で初導入
※「7つの習慣J®」は、フランクリン・コヴィー・ジャパン社の登録商標です。

上記はあくまで一部であり、この他にも様々な取り組みが、現場からの要望も踏まえスピード感を持って実行されています。

ドラマでは、教員の意識改革やアクティブ・ラーニングの実施、大胆なオープンキャンパスあたりは、前回までの放送ですでに取り上げられています。
今後どのような形で京明館高校が盛り上がっていくのかは、これまでに奥田校長と創成館高校が成してきたことに通じるかもしれません。

若干ネタバレになるかもと思う反面、その様子をドラマで観てイメージすることができれば、学校改革に悩む教育機関や子どもの進路に悩む保護者の方に、ある種のキッカケや新しい学校選びの基準を与えることになるのでは、とも感じます。

偏差値や進学実績を謳うことだけが、学校の発展につながるわけではない。
むしろ、人間性教育など成績表には現れない、されど、これからの社会にとって重要な知識・学びを芯を持って提供し、その価値をしっかり発信することも、飛躍への一手法だと改めて考えさせられます。

「先に生まれただけの僕」を観ながら、創成館高校での出来事やその他事例を比較し、より学校改革や現場について理解していければと思います。