教養を勉強したい!けれど、本やセミナーでなくもっと気軽に学びたい!
そんな方のために、今回は2回に分けて大学が無料で提供しているオンライン講座を紹介していきます。各大学が実際の授業で講義している内容や、ゲストを呼んでの講演など幅広いコンテンツを提供しているのが特徴です。
一時MOOC(大規模オープンオンライン講座)が流行り、様々な教育機関やITベンチャーが乗り出しましたが、そのほとんどが受験勉強やプログラミング・語学学習など。コンテンツの幅は極めて限られたもので、実務的な内容が多いのが現状です。
そこで今回は、幅広く教養を学べるであろう大学のオンライン講座を調べ、自宅からでも手軽に学べるものを紹介したいと思います。
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大学の講義を無償公開するJOCW
実は、大学で行われている講義を広く社会に提供・公開する団体がすでに存在します。それがJOCW(日本オープンコースウェア)コンソーシアムと呼ばれる団体で、アメリカのMITでOCW(Open Course Ware)として発足し、2005年から日本でも活動が開始されました。
現在は国内21大学がメンバーとなり講義公開を進めており、講義のみならずゲストを呼んでの特別講演やその他情報発信も行っています。
そこで今テーマは、その21大学に含まれている国立大学を対象に、外部の人間でもしっかり教養を勉強できるものなのかチェックしていきたいと思います。
JOCWの活動上、本来であれば講義で使った文章・資料等を公開するだけでよいのですが、今回はそれ以上に動画配信についてもどれ程充実しているかチェックしていきます。
国立大学のJOCW活動レビュー
第1回に取り上げるのは、東日本に位置する北海道大学、筑波大学、東京大学、東京工業大学の4校です。
第2回では、西日本側の名古屋大学、大阪大学、京都大学、九州大学の4校を取り上げていきます。
【関連記事】
・国立大学が提供しているオンライン公開講座「JOCW」まとめ2(名大、阪大、京大、九大)
サイトを一通り利用し動画も観ながら、一利用者としてその使い勝手やコンテンツについてまとめていきます。
北海道大学
北海道大学オープンコースウェア (Hokkaido University OpenCourseWare, HU-OCW, 北大OCW) : http://ocw.hokudai.ac.jp/index.php?lang=ja
まず北大が提供するOCWですが、見た目シンプルで馴染みやすそうなサイトですが、利用するとかなり使いにくいことがわかります。
サイドバーにメニュー一覧があるのですが、見づらかったり動画が記事内ではなく逆のサイドバーに表示されてあったりと、慣れないとどこに欲しい情報があるか見つけにくい構造です。
メインコンテンツは、「全学教育」「学部専門教育」「大学院教育」であり、教養コンテンツについては「全学教育」に用意されています。
【コンテンツカテゴリー】
・一般教育演習(フレッシュマンセミナー)
・環境と人間 ・健康と社会 ・人間と文化
・特別講義 ・学問の世界 ・思索と言語
・芸術と文学 ・社会の認識 ・科学技術の世界 など
科目は一通り揃っており、この他にも英語や情報学についての科目もあります。ただ用意されている講義数が各科目1〜10数個と幅があり、観たい講義に限って動画でなく、講義概要だけ掲載されているページもあるためその点注意が必要です。
また、利用されている動画ソフトが「Flash Movie」なるもので、全画面表示ができず早送りするにもロードに時間がかかるため、使い勝手がよいとはいえません。
残念ながら今回調べた中でも、クオリティーの高いものではないため、よほど北大に思い入れのある方以外にはオススメできないのが現状です。
筑波大学
筑波大学オープンコースウェア|TSUKUBA OCW : http://ocw.tsukuba.ac.jp/
筑波大のOCWは、大学で活動する研究者にスポットを当てた「筑波大の人々」と各講義を発信する「講義動画」の2カテゴリーに分けられています。
スッキリしており情報も見やすく整理されているため、比較的使いやすい印象です。
【コンテンツカテゴリー】
・がん治療 ・細胞学概論
・確率論 ・哲学、思想 ・特別講義 など
ただ、用意されているコンテンツが極めて少ないという欠点があります。主なカテゴリーは上記5つで、講義数はそれぞれ3〜10数個ほど。唯一の文系カテゴリーである「哲学、思想」の講義動画は3つしかないという状況であり、掲載分野に偏りがあることは否めません。
文系理系とも、幅広い教養を学ぶという点からしたら不十分ではありますが、がんや生体に関してピンポイントで学んでみたいという方にはオススメです。
東京大学
UTokyo OpenCourseWare : http://ocw.u-tokyo.ac.jp/
「知の開放」事業の一環として開設された東京大学OCW。さすが東大といえるだけのコンテンツが揃っており、その量・使いやすさともに高いレベルにあります。
トップ画面では「アクセストップ5」や「人気ランキング」などの情報が整理され、気軽にコンテンツを閲覧できるようになっています。カテゴリー別メニューが見当たらない点は若干残念ですが、検索欄が目立つ位置にあるため学びたい科目をすぐに見つけることができます。
【コンテンツカテゴリー】
文系理系問わず総動画数1,100以上掲載
とにかく情報量・掲載講義数が豊富ということで、教養を学ぶには持ってこいのオンラインコンテンツとなっています。ただ、関心のあるワードから講義を検索した際、単体の講義なのかシリーズものなのかがわかりづらく、続きを観たいと思ってもどこにあるのか見つけにくいというケースがありました。
体系的に学ぶには、上手く検索機能を駆使しながら講義を見つけていく必要がありそうです。
東京工業大学
TOKYO TECH OCW : http://www.ocw.titech.ac.jp/index.php?lang=JA
ページを開いた瞬間、学部別カテゴリーや各種ランキングスペースが設けられ使いやすそう!情報一杯ありそう!という印象。ただ、よく見てみると掲載されている動画数は117個と、多くもなく少なくもなくといった様子。
【コンテンツカテゴリー】
カテゴリー分けは無く、学部共通科目として物理や先端技術などを中心に掲載
東京大学同様、特にカテゴリー別になっている訳でもないため、検索から自身の関心分野を探すことになります。ただ、トップページからの検索では、その結果がどこに表示されているのかわからず、また「動画・音声」ページへ移っての検索も機能しているのか不明であり実質使えないという結果となりました。
動画自体も講義ごとにまとまっているのでなく、10分前後のものが断片的に並んでいるだけで並び替えも不可。何を学んでいるのか実感しにくい作りとなっています。
講義ノートに関するページがやたらと充実しているのを見ると、あくまで在学生が講義選択に使うためのものと見受けることができます。
まとめ
教養をもっと手軽に勉強したいと思い調べ始めたJOCWですが、使い勝手やコンテンツ量に関してほぼ整っていないのが現状です。唯一、東京大学だけは比較的使いやすく、情報量も膨大だったためある程度使えそうとわかったことがせめてもの救い。
大学にとって、こうしたオンライン上でのサービスはあまり関心事ではないんですかね。ネットから気軽にアクセスできるからこそ、自大学のブランディングやファン作りに貢献できると思うのですが、特に国立大学はその必要がないと思っていそうでなんとも。今後少子化で苦しむのは地方中小私立大学だけではないはずですし。
そういったこと含め次回、西日本の国立大学には是非期待したいところです。