弘前城の曳家工事(※画像はYoutubeより)
先日ニュースで弘前城の石垣修繕のため、城の一時的な移設が報道されていました。
そこで注目されていたのが、城を解体せずそのまま台車によって建物全体を動かす”曳家(ひきや)”工事です。

すでにある建物をそのままの形で移動する、という普通では考えられない作業を、日本の伝統業である曳家さんが執り行っていました。
観た瞬間、曳家さんSUGEEEEE!!と思ったのはもちろん、これは調べなければとのことで今回は曳家さんをテーマにまとめてみたいと思います。

曳家業のルーツは江戸時代の火消し集団

こちらの動画から実際に弘前城を移設する様子を観ることができます。

曳家業のルーツは江戸時代にまで遡り、大岡越前によって編成された『いろは四十八組』の火消し集団がそのはしりとされています。
普段は土木や建築を担う集団が、その作業の延長で家屋や橋梁(きょうりょう)又は重量物を『曳く(ひく)』技術と業績により、『曳家』という職業を確立したのが由来だそうです。
木造、鉄筋コンクリート造、鉄骨造等、建物の構造によって方法は異なるものの、大抵どんな建物でも動かすことができるとのこと。

素人目には、あれだけ大きなものを動かすと建物自体にダメージがいかないか心配になりますが、曳家さんの技術を引き出す最先端の機械がその役目を担っています。建物の高低レベル、歪みをミリ単位で調整でき、場面や状況に合わせて慎重に操作され作業を遂行します。

現代だからこそ光る曳家さんの価値

基本的に曳家さんが活躍する場面は、一例として以下があげられます。

・土地の区画整理などで建物を移動させたい
・日当たりの悪い建物の向きを変えたい
・歴史的建造物や文化財を保護する

個人宅などで利用される機会はほとんど無く、全国的にもそこまで需要があるわけでもないため、曳家を専門とする業者も少なく認知もされにくいのが現状です。
伝統業にありがちな後継者不足・需要の確保などが課題となっており、知名度の向上・価値の再確認が鍵を握っています。

ただ、よくよく考えると曳家さんの価値は、今の時流にのり今後さらに高まっていくのではと思います。
建物を造っては壊すだけの時代が過ぎ去った現代において、ある物を無駄にしない、建物を大事に長く使えるようやりくりする、という面で曳家さんの価値が存分に発揮されるのではないかと考えられるからです。

時代に合わせて古い物が邪魔にならない、そぐわないという状況を改善し、その価値をいつまでも後世に伝える一手段としてその役目が期待されます。
地球環境への配慮・エコが進む社会で、こうした伝統業がもう一度スポットを浴びる機会が今後さらに増えていって欲しいと思います。


【参考】
[曳家って何?]|社団法人 日本曳家協会
曳家 | 株式会社 大城
曳家工事とは? : 曳家専門株式会社 我妻組