大学生の内に必ず読んでおきたい必須教養本として毎年取り上げられる「銃・病原菌・鉄」。
教養を学ぼうとする人にとって、もはやお馴染みの超有名本ですが、そのボリュームやジャンル(人類史)でつい敬遠してしまった方も多いと思います。
自分も大学時に数ページめくって諦めた側の人間でしたが、今回やっと読破したためメモとして残しておきます。
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目次とコンテンツ概要
プロローグ ニューギニア人ヤリの問いかけるもの
第1部 勝者と敗者をめぐる謎
第1章 1万3000年前のスタートライン
第2章 平和の民と戦う民の分かれ道
第3章 スペイン人とインカ帝国の激突
第2部 食料生産にまつわる謎
第4章 食料生産と征服戦争
第5章 持てるものと持たざるものの歴史
第6章 農耕を始めた人と始めなかった人
第7章 毒のないアーモンドのつくり方
第8章 リンゴのせいか、インディアンのせいか
第9章 なぜシマウマは家畜にならなかったのか
第10章 大地の広がる方向と住民の運命
第3部 銃・病原菌・鉄の謎
第11章 家畜がくれた死の贈り物
本書は、著者がニューギニア人のヤリから問われた以下の問いに答える形で進んでいきます。
あなたがた白人は、たくさんのものを発達させてニューギニアに持ち込んだが、私たちニューギニア人には自分たちのものといえるものがほとんどない。それはなぜだろうか?
この問いは本文中で、
「世界のさまざまな民族が、それぞれに異なる歴史の経路をたどったのはなぜだろうか?」
「世界の富や権力は、なぜ現在あるような形で分配されてしまったのか?なぜほかの形で分配されなかったのか?」
といった言葉に言い換えられ、多様な切り口から検証されていきます。
また、タイトルである「銃、病原菌、鉄」は、他民族を征服する上で重要な役割を果たしたものとしてあげられ、それをはじめにもったのがなぜ白人なのかという点を明らかにするのが、本書の最重要テーマです。
本書の結論
簡単な結論を述べてしまうと、白人が上記3要素をいち早く持ち合わせた理由は、他地域の人類と比べて白人の居住地がたまたまそれらを生み出すのに有利な環境(資源、地理的要素など)にあったからだ、とのことです。
民族的に白人の遺伝子や知性が、他の民族と比べて優位だったという事は決して無いとも著者は述べています。
特に、人類が文明を築くために必要な食料の安定供給・生産に関しては、その居住地の環境が決定的に影響してくるのです。例えば、
1、栽培可能な植物の栄養価が高い
2、栽培可能、家畜化可能な動植物が多くいる
3、白人の住む地域(ユーラシア大陸)が横長(東西)に広い地であった など
身の回りに上記条件を揃える環境があったか否かで、その後の各民族の発展に雲泥の差が生じ始めます。
安定した食料生産体制の確立→人口増加→食料生産以外の文化(経済・社会・政治システム)の発達→他民族間との交流・侵略→さらなる巨大・高度文明へ
環境要因がどれだけ揃っている地域か、また上記フローをいかに早くこなせるかが、高度文明を生み出す鍵となっていたのです。
また、
人類が食料を生産する方法を「発見した」とか「発明した」とかいうのはわれわれの思い込みであって、事実ではない。狩猟採集生活をつづけるか、それともそれはやめにして食料の生産をはじめるかという二者択一で、農耕民になることを意識的に選択した例は、現実にはほとんどない。
と著者は言い切っており、いかに人間が驕った存在か、たまたまや偶然性が人類のその後の歴史にどれだけ大きな影響を与えているのかを考えさせられる内容です。
416ページに渡るヘビー級書籍
人類史という扱いにくいテーマを400ページ以上に渡り取り上げた本書。歴史から生物学、考古学、医学と慣れない分野に苦しみながら1時間20ページ読み進めるのがやっとでした。予備知識の無い状態で理解するには、調べながらメモ取りながらとかなり骨を折りました。
通勤時間やスキマ時間では中々難しいと思うため、時間をとってじっくり読み込む方がオススメです。
まとめ
やっと読み終えたという達成感と、1度こうした知識に触れておけば他の書籍もより深く読み込めるだろうという今後の楽しみを得られた1冊でした。
挑戦するには確かにハードルは高いものの、こなせば後につながる学びがあることを実感。
今回は上巻だったので、下巻もサクッと読んでおきたいと思います。