教養としての哲学

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先日の「ヨーロッパ思想入門」に続き、哲学・思想関連の本を読んでみたので紹介します。
「教養としての哲学」は、京大→商社マン→フリーター→公務員→プリンストン大学客員研究員という異色の経歴を持つ小川仁志氏の著作です。

著者がこれまでに出会ってきたグローバルエリートたちを参考に、哲学や思想がどのようにビジネスの現場で活かされていたか、またそうした場でどんな知識が必要になってくるのかを踏まえ、哲学・思想をビジネスツールとして紹介しています。

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目次とコンテンツ概要

教養としての哲学、目次

ツール1,歴史 ー 押さえておくべき「哲学史」
ツール2,思考 ー ビジネスに使える「思考法」
ツール3,古典 ー 読んでおくべき「名著」
ツール4,名言 ー 相手の心を打つ「名フレーズ」
ツール5,関連知識 ー プラスαの「関連する知識」
ツール6,人物 ー マークしておくべき「重要人物」
ツール7,用語 ー 知っておくべき「必須の用語」

本書では、グローバルビジネスに必須とされる哲学の教養を、ビジネスのためのツールとして位置づけ紹介しています。
哲学や思想が、一部の研究者や専門家のものだけでなく、ビジネスの交渉の場や会議でもよく比喩として用いられている現状を著者が経験したことから、特に欧米人と仕事をする際、知っておくべき知識として社会人や就職前の大学生に向けて書かれています。

本書では、上記7項目をツールとして分け章立てし、複数の視点から哲学の全体像を客観的に掴めるようにしているとのこと。

「ツール1,歴史」では、二千数百年の哲学史の流れをざっくりと振り返るための概観が記されています。
「ツール2,思考」「ツール3,古典」では、ビジネスシーンで有名、または重要な哲学的思考と名著の概要を、「ツール4,名言」では、交渉や談義の場で相手に響く哲学の名フレーズを取り上げています。
「ツール5,関連知識」には、西洋哲学以外にプラスαで知っておきたい「宗教」「倫理」「日本の思想」についての簡単な説明がなされ、これまで本書に登場した人物や用語をまとめたものが「ツール6,人物」「ツール7,用語」となっています。

ボリュームは235ページと軽い部類で、忙しいビジネスマンでも通勤時間やスキマ時間を使えば1週間もせず読み終える事ができると思います。

「広く浅く手軽に」を体現した哲学入門書

まず読んでみて思ったことは、とても読みやすい反面、内容が軽いということでした。
というのも、先日読んだ「ヨーロッパ思想入門」がしっかりと初学者が”学べる”本であったのに対し、本書は哲学をあくまで”知る”ための1冊であると感じたからです。

もちろんその点について冒頭でも触れたとおり、本書が哲学や思想をビジネスシーンで”使える”ように書かれたものであるため、深く掘り下げるというより、ツールとして活用できるようになるためのものだからと思います。

ただ、各ページに書かれていることが、毎回同じことの繰り返しとなっており、視点を分けるために立てた7つの章が、全く意味の無いものになっていた点は否めません。
各ツール(視点)ごとに表現を変え、読み終わった際包括的にある概念や思想について理解が深まっている、というであればわかります。ですが、同じ表現が重複して記載されているだけであり、その表現・記述のみしか概念を捉える術がなく、理解というよりただの暗記になってしまうと感じました。

また、ツール2〜4で紹介されている各論、各著作は、年代バラバラでランダムに取り上げられているため、どの思想がどんな主張・作品に影響を与えているのかわかりづらく、体系的に学ぶのは難しいかもしれません。

あくまで個人の見解ですが、利用するとしたら、肩肘張らない程度に気軽に哲学ってどんなものかを広く浅く知りたい場合に活用できるとは思います。

つい忘れてしまいがちな日本の思想に言及

本書でなるほど!と感じた部分は、ツール5で取り上げられていた「日本の思想」についてです。

哲学!思想!となると、どうしても本場西洋にばかりフォーカスが当たり、その他地域で発展した事につい目が回らないことがあります。

ですが、特にグローバル人材として日本人が世界で活躍するには、まず日本について知っていなければいけない。であれば日本の代表的な思想くらい知っておいた方がいいのでは、という視点は当たり前ながらも見落としていた部分でした。

広義の日本哲学として、以下の流れがあることを紹介。

[神道]→[仏教]→[儒学]→[国学]
→[狭義の日本哲学]→[啓蒙思想]→[戦後民主主義]

もちろん、この整理の仕方についても様々な意見があると思いますが、まずこうした流れがあるかもしれないということを念頭に、随時学びながらアップデートしていければと思います。

また、ここで狭義の日本哲学として、京都学派、特にその創設者である西田幾多郎氏や同時代の和辻哲郎氏が挙げられていました。
名前だけしか聞いたことがなく、そういえば受験の評論文で触れたことあるな、程度の認識でしかありませんが、今後機会をおってその著作を読んでみたいと思います。

まとめ

トータルでしっかりと哲学を学びたいというのであれば「ヨーロッパ思想入門」をオススメします。
ですが、本当に哲学は苦手でこれまでも挫折して、だけどなんとか哲学の入り口に立ってみたい!とお思いの方であれば、まずは触れてみることを目的に本書を読んでみてもいいかもしれません。

また、内容自体は最低限を押さえているというものなため、順次学んだことをガンガン書き込む用のテキストとして活用してみようとも思います。
同じ表現しか書かれていないのであれば、他にどんな表現を通して各概念を説明できるか、など深めていくベースにしていければなと。

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