日本人の英語

昨年フィリピンに行ってからというもの、少しずつ英語の勉強をしているのですが、現在伸び悩みの真っ只中。
どうにかそのマンネリを打破したいと思い手にしたのが、今回紹介する「日本人の英語」です。文法書にはない英語の論理構造や、ネイティブの著者が日本人英語に感じる違和感を的確に指摘し、ユーモアたっぷりに解説してくれます。

日本人が間違いやすい勘違いポイントや、直訳に頼った英作文・会話表現などをネイティブ感覚から理解することのできる1冊です。文法書ばかり読み漁って頭が固くなってしまっている方には是非オススメ。

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目次とコンテンツの概要

日本人の英語 目次

1,メイド・イン・ジャパン ー はじめに
2,鶏を一羽食べてしまった ー 不定冠詞
3,あの人ってだれ? ー 定冠詞
4,間違いの喜劇 ー 単数と複数
5,思いやりがなさすぎる ー 純粋不可算名詞
6,文脈がすべて ー 冠詞と複数
7,慣用の思し召し ー さまざまな前置詞
8,意識の上での距離 ー on と in
9,「かつら」と「かもじ」 ー off と out
10,明治な大学 ー 名詞+ of +名詞
11,もっと英語らしく ー 動詞+副詞
12,点と線 ー 完了形と進行形
13,泣きつづける彼女 ー 未来形
14,去年受賞したノーベル賞 ー 関係詞の二つの用法
15,アダルトな表現をめざして ー 先行詞と関係節
16,慎重とひねくれ ー 受動態と能動態
17,知識から応用へ ー 副詞
18,したがってそれに応じる ー 副詞と論理構造
19,「だから」と「だからさ」の間 ー 接続詞
20,自然な流れを大切に ー おわりに

著者はマーク・ピーターセンというアメリカ人で、彼自身日本の大学で論文添削の仕事をしている関係で、日頃から多くの日本人英語に接してきたバックグラウンドがあります。
ゆえに、日本人が英語を書く大変さはもちろん、実はこの書籍自体、著者が日本語で書き下ろしているため、外国語でモノを書く難しさを理解した上で解説されています。

主に英語による文章作成や、英文の読解に役立つ知識が満載で、普段仕事で英語を使っている方は特に必見です。
また、高校生であっても英語表現の背景にちゃんとした理由があることや、受験においても、ある程度の大学で出題される英作文に対して役立つことがあるかもしれません。

目次は上記20のトピックに分かれていますが、より大きな括りでみると本書は以下6つのカテゴリーに分類できます。

1,冠詞と数(a, the, 複数, 単数などの意識の問題)[1~6]
2,前置詞句[7~11]
3,Tense(文法の「時制」)[12~13]
4,関係代名詞(that, whichなど)[14~15]
5,受動態[16]
6,論理関係を表す言葉(consequently, becauseなど)[17~19]

[]内は該当するトピック番号となっており、知りたい部分や自信のない分野に目を通すだけでも十分有益な示唆を得ることが出来ると思います。
といっても本書自体196ページしかないため、通して読んでも1日掛かりません。わざわざ買わずとも図書館などにあればその場で読めてしまうため、気軽に手にとってみてください。

英語を”理解する”おもしろさを教えてくれる本

これまで暗記を中心とした英語教育を受けてきた人にとって本書はとても新鮮で、なぜ英語でそう表現するのか、どんな違いがあるのかなど、これまで疑問に思ってきたことが明確になる内容です。

特に、この中で取り上げられている「冠詞と数」については本当に目からウロコで、些細な問題としてしか捉えてなかった英語への認識を覆すテーマだと改めて学びました。

例えば、
・I ate chicken.
・I ate a chicken.
という2つの文にどんな違いがあるのかお分かりでしょうか。

日本人の感覚では、「a」の有る無しだけでそんな大した違いはないだろうと、「私は鶏肉を食べた」という訳をつけると思います。
ですが、著者は日本人の友人から、手紙でこの「I ate a chicken」が書かれているのを見た時、笑っていいのか悲しんでいいのかわからなかったと言います。

実は、「I ate chicken」には「私は鶏肉を食べた」という訳が当てはまるものの、「I ate a chicken」では「私は鶏を1羽(その場で捕まえて、そのまま生で)食べ(てしまっ)た」という、あり得ないほどおぞましい文章になってしまうのです。

この例から著者は「aは名詞につくアクセサリーではない」と主張し、日本でこれまで教えられてきた「名詞にaがつくかつかないか」「名詞にaをつけるかつけないか」という問題ではないと言っています。

先行して意味的カテゴリーを決めるのは名詞でなく、aの有無である。そのカテゴリーに適切な名詞が選ばれるのはその次である。もし「つける」で表現すれば、「aに名詞をつける」としかいいようがない。「名詞にaをつける」という考え方は、実際には英語の世界には存在しないからである。

「名詞にaをつける」ではなく、「aに名詞をつける」という認識は全くもって持ち合わせていない感覚だったと思います。
また「a」だけでなく「the」についても、下手に使ってしまうとネイティブから「What?(そのtheって何のthe?何についてのthe?)」と聞き返されること間違いなし、だとか。

この他にも、前置詞については、
・Get on the train (airplane, ship, ferryboat, bus)
・Get in the car (truck, taxi, private aircraft)
でどうして分けて考えられるのかや、

受け身に使われると習った「by」も
・The article was written by a word processor.
・The article was written on a word processor.
上記2文で、実は異なる印象を与えてしまっているという事が指摘され、正確にはこの「by」は間違っているとされています。

日本人の感覚にないネイティブだからこそ教えられる違いが山ほど挙げられ、逆にその些細な間違い・勘違いを正すだけでグッとネイティブに近付くことが出来るのだそうです。

ある程度学んできたものの、イマイチ上達しない、英語に対する疑問がどうしても解決・納得できないという方は、一度読んでみるとまた学習が一気に進むかもしれません。
暗記に頼るのではなく、視点を変えてその根本のニュアンスや論理構造を理解することから英語と付き合ってみてはいかがでしょうか。

ちょっとした注意点

英語をより深く理解するために有益な本書ですが、書かれたのが1988年とすでに出版されてから25年以上経っています。
ですので扱われている内容、特にこの年月の中で変わってきた物事への認識は、英語表現にも影響しており、いくつか引っかかる部分が出てくると思います。

例えば、本書では、
・She put it in the freezer.
・She put it in her microwave.
の違いを、どこの家にもあるような冷蔵庫の場合は「the」で、そこまで普及していない電子レンジの場合は「her(所有格)」を使うと説明していました。

ですが、最近では多くの家庭で電子レンジは普及していると考えられるため、「the」を用いても構わないと更新されています。
そうした内容は、この「日本人の英語」の続編である「実践 日本人の英語(2013年)」に書かれているため、シリーズ(3作)含めどれか1冊買って読むのであれば、「実践 日本人の英語」をオススメします。