「学校の授業って全然変わってなさそうけど、このままでいいの?」
「将来、生きていくに必要な力って本当に育まれてる?」
「そもそもエドテックって何?江戸?」
はい、そんな疑問や勘違いにお応えしていくのが、今回ご紹介する『Edtechが変える教育の未来』です!
本書は2018年に出版され、Edtechの可能性や課題をわかりやすく整理した、いわばEdtech入門書。教育関係者はもちろん、教育に関心の高い保護者や社会人の方にもぜひご覧いただき、子どもたちへの教育やご自身の学びに起こるイノベーションを存分に感じていただける内容です!
今回は、まずEdtechの可能性や課題を整理しつつ、学校における授業や個人の学びがどのようにアップデートされ得るかについてご紹介していきます!
Edtechによって教育はどう変わる!?
第1章 なぜエドテックが必要なのか
第2章 エクステックが起こす変化とは
第3章 海外で進むエドテック
第4章 徐々に増えてきた日本のエドテック
第5章 文科省・経産省の動き
第6章 教育をデザインし直そう
本書は、Edtech界隈ではほぼ知らない人はいないであろう第一人者・佐藤昌宏氏が執筆しています。
佐藤氏は、日本でEdtechが流行る何年も前から、自身でeラーニングのサービスを起ち上げたり、学校設立に携わるなど、テクノロジーを用いてどう教育の可能性を広げられるかを自ら体験し研究されてきました。
書籍の中では、佐藤氏がこれまでEdtechを推進する中で感じてきた可能性や課題が、各章ごとに触れられていますが、まず大前提としてテクノロジーの進歩が何を可能にしたかを簡単にまとめると、
・データの集約、蓄積
・データの分析(傾向、比較等)
・大容量通信
・情報共有、情報発信 など
といった点があげられます。
そして、“スマートフォンの普及”や“通信環境の整備”が進んだことで、誰でもこうしたテクノロジーの恩恵を受けられるようになり、昨今のEdtechの発展につながっています。
では、ここからそうした現状が、教育をどのように変えていくのか。その可能性や課題を本書からまとめていきます。
Edtechの可能性やメリットについて
・学びの選択肢を広げる(学習方法やスタイルを選べる)
→学校や教育制度に頼らなくても学びが手に入る
・個別最適化学習(適応学習、アダプティブ・ラーニング)の実現
・双方向型、反転学習、協働学習の実現
・学習状況の発信、共有
・学習者が何を学んできたか(学歴ではなく学習歴)で評価される社会
・学校(リアル)でしか学べないことの価値が高まる
まず個人の学びについて、1番わかりやすいのがMOOCやデジタル書籍などオンライン上で利用できる学習コンテンツが増えてきたことがあげられます。
これまでは、学校や職場、自宅などが主な学習スペースだったかと思いますが、オンラインに教材があることで、通勤電車の中や、ちょっとした待ち時間、そして歩いている時でさえも学びにアクセスできるようになりました。
例えばMOOCは、インターネット上で誰もが無料で受講できる開かれた講義です。スキルアップのための資格取得から、大学の授業まで、その道の専門家が提供する質の高い学びにスマートフォン1つでアクセスできます。
また、iPadやKindleで、持ち運びのしにくい専門書や参考書はデジタル書籍として何冊でも持ち運べ、「読む」ことでインプットしていた書籍の内容も、オーディオブックの登場により、読み上げくれる音声を「聴く」ことで学べるようにもなりました。
すでにみなさんも使ったことがあるかもしれませんが、実はこれもテクノロジーによって拡張された学習体験の1つです。
また、学校などの教育機関では、1人1台端末や授業支援サービスなどにより、従来型の授業が変わっていきます。
具体的には、教師が児童生徒のタブレットにデジタル教材を提示したり、ノートに手書きした内容を黒板に映写したり、あるいは児童生徒同士のタブレットを共有してリアルタイムに意見交換や協働作業をしたり、といったサービスがあります。
これは、「なぜ学校にもテクノロジーが必要なのか」という項で語られていますが、今後子どもたちが世界で生き抜くために必要な「21世紀型スキル」が関係しています。
欧米を中心としたIT化とグローバル化を背景に、特に注目されるスキルとして「ICTリテラシー(テクノロジーを理解し、生活や学びの中で使いこなすこと)」が世界的に定義されました。
それに伴い、文科省でも「情報活用力」としてテクノロジーの利活用を通じて、この力を伸ばしていきたい。そこで、学校での環境整備等を進め、授業や学校生活の中でテクノロジーに触れながら、自然にリテラシーを高めていこうとしているのです。
その他にも、個別最適化学習(アダプティブ・ラーニング)や授業支援サービスにより、子どもたち一人ひとりに合った学習コンテンツの提供や、一方通行ではない双方向型の授業の実施も可能になってきています。(事例として、以下の動画をご覧ください)
Edtech普及における課題
・校内における端末や通信環境の不整備 p47
・学習者や保護者、教育者のテクノロジーへの不理解 p48
→多くの大人が経験してきていないため、過去の経験や価値観が通用しない
・成熟国としての安定がもたらす危機感の欠如
続いてEdtechの課題ですが、先ほどお伝えしたMOOCや1人1台端末にも、モチベーションの促進や環境整備といった課題が実はまだ残っています。
しかし、それらEdtechの可能性を広めるためにそもそも1番の課題になっているのが、実は「学習者や保護者、教育者のテクノロジーへの不理解」が大きいのではないかと佐藤氏は言います。
なぜ、IT活用が進まないのでしょうか。環境を整備するための予算や、正しく教えられる人が不足していることも、原因として挙げられます。ですが、最も大きな原因は、「教育」に関わる人の多くが情緒的、感情的、人間的、職人的な側面に囚われすぎていて、テクノロジーでは対応できないと思っている点にあります。
「人が指導するからこそ相手に伝わる」
「端末が無いからできない」
「サービスがわかりづらくて使えない」
確かにあると思います。
しかし、Edtechを推進したところで、そうした情緒的、感情的な面が疎かにならない工夫はできますし、何よりそれを使う側の人間がそもそもの可能性を否定したり、過去の常識に囚われたり、よくわからないものとして遠ざけてしまっているメンタリティがあるのではないか。
Edtechにも改善の余地は多分にあると思いますが、本来それらの恩恵を受け取るべき学習者や教育者がそうした態度でいては、ITがいくら発展しても、それが教育現場に活かされる日は来ないと言います。
ではどうするか。佐藤氏は、そうではなく、テクノロジーでできることと、人にしか理解できないことが何であるかを明確にし、うまく組み合わせて使うことこそ、もっとも進化した教育の姿ではないか、とも問いかけます。
これからの教育者は「テクノロジーが得意なこと」「学校でしか学べないこと」「人間にしかできないこと」を区別し、学習者にとって最適なものを選んでそのモチベーションを高める存在へと変わるべき
このご指摘はまさにその通りと感じますし、改めて課題の要点がテクノロジー側にあるのではなく、それを使う人側にあるのだということに気づかされました。
気づいた人から変わり、行動し始めること
ここまででEdtechの可能性と課題について触れてきましたが、正直まだまだ紹介しきれていないことばかり!
本書は200ページちょっとの内容ですが、それでもここでは語り尽くせないほどEdtechに関する話題が盛りだくさん。
特に、今回ほぼ紹介できていないのが、3〜4章にわたって取り上げられている多くのサービスです。
実際この部分で、読者の皆さんにはサービスに触れてもらいつつ、その可能性やおもしろさを感じてもらう部分になるかと思いますが、本記事ではお伝えしきれなかったため、それはぜひ実際に使っていただき体感してもらえればと思います。
ちなみに巻末には、なんと主要な国内サービスが61こ!海外サービスも21こ載っています!
私もすでに学習ログを管理、共有できるスタディプラスや、プログラミング学習サイトのProgate、学び直しのためのeboardなどいくつかアカウントを作って使い始めています。
まずは自ら体験してみることで、テクノロジーをきちんと理解し使えるようになることが1番。
教育関係者の方はもちろん、保護者の方も、いくつかサービスを使ってみながら、良さそうなものがあればぜひ子どもたちと共有し、一緒にEdtechで“遊んで”みてはいかがでしょうか?