個人的には教養を通して、学びへのモチベーションを喚起できないかと常日頃から考えており、外部のサービスを活用するという観点で、以前からMOOCなどのオンラインサービスに注目していました。
コンテンツの配信に関し、世界中を相手に幅広いコースを提供できるプラットフォームとしては、現状MOOCが最有力であり、日本でも遅ればせながら日本版MOOC(JMOOC)の取り組みが始まっています。
今回は現状確認も含め、国内の大学がどんなプラットフォームを通してコンテンツを配信しているのかについて調べてみました。
参考にしたのは、大学ICT推進協議会が今年3月に発表した「MOOC等を活用した教育改善に関する調査研究(PDF資料)」です。
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講座コンテンツの配信・提供方法は主に3つ
国内の大学が独自で作った講座コンテンツは、大きく分けて3つの仕組み・媒体から発信されています。
・OCW(オープンコースウェア)
・MOOC(大規模公開オンライン講座)
・一般企業の教育系Webサービス
基本的にはこれら媒体を通し、各大学が自前でコンテンツを配信する方法。国内、海外の代表的なMOOCから配信する方法。最後に一般企業が運営する教育系Webサービスから配信する方法、という3つが挙げられます。
以下、各媒体に分けて具体的なサービスを紹介していきます。
OCW(オープンコースウェア)
OCW(オープンコースウェア)は、大学が講座コンテンツを配信するため独自に開発した媒体で、各大学の公式ホームページからアクセス出来ます。
主に大学で行われた授業・講義の内容が動画として公開されたり、そこで使用された資料(パワポ、PDF)なども自由に閲覧可能です。
在学生が授業の復習をしたり、一般の方が気軽に大学の授業を体験することができます。
ただ、コンテンツとして最適化された講座が揃うMOOCとは異なり、OCWにはとりあえず公開しているという講座も多く、あくまで既存コンテンツの焼き直しを置いているだけ、という現状も否めません。
以前、国立大学の運営するOCWを調べた記事を書きましたが、その時まともなコンテンツを配信していたのは東京大学と京都大学、大阪大学くらいで、あとはコンテンツが少なかったり、動画が再生されなかったりと散々な状況でした。
講座を広く公開していくという取り組みからすると、OCWが本流になることは現状からして考えにくい選択肢となっています。
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▶ 国立大学が提供しているオンライン公開講座「JOCW」まとめ1(北大、筑大、東大、東工大)
▶ 国立大学が提供しているオンライン公開講座「JOCW」まとめ2(名大、阪大、京大、九大)
MOOC(大規模公開オンライン講座)
MOOCとは、「Massive Open Online Course(大規模公開オンライン講座)」の略であり、大学の枠を越えた講座コンテンツの集うプラットフォームのことです。
世界中の大学からコンテンツが集まるという点でOCWとは大きく異なり、特に海外の主要MOOCでは学習支援や履修認定などの機能も備えています。
海外に遅れを取りながらも、日本でもやっと日本版MOOCが立ち上がりじわじわとコンテンツも増えつつある状況です。
以下で日本版MOOC(JMOOC)と海外の主要MOOCを紹介していきます。
海外のMOOCに関しては、この他に何百とありますが、今回は国内の大学がコンテンツを提供しているものに限り取り上げています。
OpenLearning, Japan(JMOOC)
OpenLearning, Japan | JMOOC公認! 無料で学べるオンライン大学講座提供サービス : https://open.netlearning.co.jp/
株式会社ネットラーニングの運営するOpenLearning, Japan(以下、OLJ)では、東海大学や学習院女子大学、九州大学などの講座が提供されています。
講座数は少なく、実際どれくらい利用されているのか未知な部分はありますが、JMOOC公認のプラットフォームとして運営されています。
開講中の講座が1つ、開講予定が5つ、受付終了した講座が10こという状況であり、昨年(2014年)7月からスタートしたサービスの割には物寂しい限りです。
gacco(JMOOC)
gacco The Japan MOOC | 無料で学べるオンライン大学講座「gacco」(ガッコ) : http://gacco.org/
NTTドコモが運営しているgaccoは、先のOLJよりも多くのコンテンツが用意されており、比較的充実したサービスとなっています。
ただ、あくまでOLJとの比較であり、海外のMOOCと比べると量・質ともに雲泥の差が生じてしまっているのは明らかです。
今後の普及に期待したいところです。
Coursera(アメリカ版MOOC)
Coursera – Free Online Courses From Top Universities | Coursera : https://www.coursera.org/
2012年、スタンフォード大学の教員2名が教育ベンチャーとして立ち上げたMOOCです。2015年10月現在、全世界26ヶ国、133大学が1,465のコースを提供し、日本からは唯一東京大学がこのプラットフォームにコンテンツ提供をしています。
MOOCの世界的な代表格と言ってもよい充実の講座数と一流大学のラインナップは、眺めているだけで頭が良くなると思えるほどです。
edX(アメリカ版MOOC)
edX | Free online courses from the world’s best universities : https://www.edx.org/
edXは、MITとハーバード大学が共同出資して設立した非営利プロジェクトのMOOCです。
こちらも世界中から一流の大学が集まり、30近いカテゴリーからレベル別、言語別のコースやプログラムが細かに分類され大量に用意されています。
日本からは、東京大学・京都大学・東京工業大学・大阪大学が英語でコンテンツを提供しており、edX上から講義を受けることが可能です。
一般企業の教育系Webサービス
無料動画のオンライン学習サイト – schoo WEB-campus(スクー) : https://schoo.jp/guest
最後に大学が一般企業と提携し、コンテンツ制作や配信において協働している例を取り上げます。
これは以前にも紹介した「スクー(SCHOO)」というオンライン教育サービスのことであり、今年(2015年)8月時点で全国13大学15のコースを配信しています。
主にプログラミングや語学、資格などのプログラムの他に、教養として学べる大学ならではの講義も多数用意されているため、今後さらなる拡大に期待できます。
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▶ 全国13大学が公開中!スクーで受けられる教養講座が勉強しやすく無料で学べていい感じ
まとめ
国内大学におけるMOOC等の活用状況は、一部のトップ大学を除き本格的に取り組んでいる大学は少ないというのが現状でした。
自校のブランディングや学生の学力サポート、社会に開かれた大学としての役割等を果たすために重要な活動であることは間違いありませんが、どうしても直接的なメリット(利益)となりにくい分、各大学は消極的になってしまうというのが本音だと思います。
もちろんその価値や有用性について、社会や企業側の理解も重要で、MOOCの認知や知識基盤社会における知的学習の必要性を強く訴えていくことが大切だと感じます。
今後は、この現状を踏まえどんなコース・講座を活用すれば上手く教養を養えるか、という点について考えていきたいと思います。