ロボット産業について
NHKで放送されていたNext Worldなどで、ロボットの可能性やイノベーションについて語られていましたが、実際のところ業界としてどう発展していきそうか。あまり知るタイミングもなかったので、資料を漁りながら簡単に調べてみました。

ロボットといっても様々あるので、まず産業用ロボットとサービスロボットの2つに分け、今回は産業用ロボットに着目していきます。

・産業用ロボット
 →主に工場や物流の現場で機械の組み立てや運搬などを行う比較的大型のロボット
・サービスロボット
 →介護現場や会社の受付などで活用される動作補助、コミュケーション系ロボット

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産業用ロボットの市場規模と現状

産業用ロボット
ロボット業界で、最も市場が形成されている産業用ロボットについてです。
2011年の世界市場規模は全体で約85億ドル(販売金額ベース)。そして、日本はこれまで先進国として世界を牽引してきた結果として、世界シェア50.2%を誇ります。

産業用ロボットが活用されている業界は、主に自動車産業、電気・電子産業、金属・機械産業、樹脂・化学産業があげられ、特に販売台数に関して自動車産業と電気・電子産業の合算が全体の過半数を占めている状態です。
以下、主要国と主要業界別の世界販売台数比較になります。

産業用ロボット-主要国製造業別販売台数シェア

韓国は電気・電子産業、中国、ドイツは自動車産業といったように各国の特色が表れる中、日本は全体の販売台数でトップとなっています。

こうした背景には、世界的にもプレゼンスの高い大手自動車、電機メーカーの存在があげられます。他国に先んじて、カイゼンの積み重ねで生産性の向上や品質管理を徹底し培われてきた高い技術力が、世界を舞台に大きな価値となっており、日系メーカーの優位性を生み出しています。

また、ロボットを構成する主要部品や最適設計を実現する有力なサプライヤーが国内に数多く存在することも大きな強みとなっています。特に、ロボットを生産ラインに載せ、その性能を最適化し100%引き出すには、SIer(システムインテグレータ)の力が欠かせません。
クライアントとメーカーのスキマを埋めるSIerの豊富なアイデアと蓄積されたノウハウが、産業用ロボットの普及に貢献しています。

課題、中国市場とケアサポート体制

書き込み、紙と万年筆
以上のように世界をリードしている日系メーカーにも、今後業界・市場の変化を受け更に進化・発展していくことが求められます。

拡大する中国市場へのアプローチ

これまで産業用ロボットの主要な市場が、日本、欧州、欧米だったのに対し、今後は新興国へのシフトが予想されます。
特に中国、タイ、インドでの市場拡大は間違い無く、それら新興国に対しどのようにアプローチしていけるかがカギとなります。
中国では近年、人件費の高騰や品質管理への関心も高まり、産業用ロボットへのニーズが急拡大しています。新興国用にローカライズされた低価格帯のロボットや、海外展開に伴う高品質化を図るための高機能ロボットなど、ニーズの二極化も見られる中、現地ユーザー、クライアントとの対話がより一層重要視されている状況です。

価格競争に影響されない価値提供システム

低価格帯ロボット分野には、すでに韓国や台湾の企業が進出しており、これら企業と戦うにはロボットの現地生産や調達コストの削減などが日系メーカーに強いられています。
こうした価格競争とは別の分野で競争力を維持していくには、ビフォーサービス・アフターケアといったサービス体制強化による差別化が1つの手になってきます。
製造における塗装の仕方1つとっても、同じ塗料でいかにむら無く仕上げるかといったノウハウや、故障を未然に防ぐ体制作りなど、ロボット単体の機能に頼らず、それを使いこなすための仕組みやノウハウの提案が重要です。
日系メーカーにとって、価格で勝負をするより、こうした提案を用いた価値提供システムを生み出す方が合っていると考えられます。
単にロボットを導入する以上の付加価値を提供できれば、他のアジアメーカーに対し明確な差別化・優位性を確立できると考えられます。

まとめ

以上、産業用ロボットの現状と課題でした。

基本的には、これまで日本のメーカーが辿ってきた道を今度はロボット産業が歩み始めた感じかなぁと思います。
特に家電業界ではローカライズに手間取り、サムスン電子などに遅れを取ってしまったという過去もあるため、そうした二の舞いになることだけは避けて欲しいところ。

メーカー主導のモノづくりが根付いている分、市場の変化やユーザーニーズへの対応がイマイチという風潮を是非とも覆して、先進ロボット大国という地位を維持・発展していってほしいと思います。


– 参考
経済産業省製造産業局産業機械課「2012 年 ロボット産業の市場動向」 2013/7
経済産業省製造産業局産業機械課「2012 年 ロボット産業の市場動向 調査結果概要」 2013/7/18
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「NEDOロボット白書2014」 2014/3
みずほ銀行 産業調査部「産業用ロボット業界の現状と展望~業界構造変化を踏まえた日系ロボットメーカーの戦略方向性~」 2014/3/28
三菱総合研究所「ロボットによる産業革命の実現に向けて-ユーザー主導・システムインテグレーター主導のイノベーションを-」 2014/7/24

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