自分に似せたアンドロイドを作り、さらに自分をアンドロイドに似せるため整形までした大阪大学石黒浩教授のインタビュー記事です。
ロボットと食ということで、珍しい組み合わせのテーマに興味深く読んでみましたがやはりおもしろい。
2015年8月17日付 メシ通
> あの石黒浩教授にサシ飲みインタビュー! ロボット社会における食の未来はどうなる?
ここではアンドロイド=ヒト型ロボットということになると思いますが、それらを通じて改めて人間に対する理解が深まる内容でした。
学んだことを引用しながら、まとめてみたいと思います。
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食べる行為、ロボットの目的、そして人間とは
食に関するロボットってね、ごはんを作るロボット、ごはんを食べて味がわかるロボット、食べられるロボットって3通りあるんですよ
まずのっけからハッとさせられるコメントです。
これまで食事をするという行為・動作について、深く考えることはありませんでしたが、「食べる」という行為にはその過程として、味覚による味の識別、物を溶かし、噛んで、飲み込むという口の中でのプロセスを経て完了するものであることがわかります。
普段、当たり前過ぎて見逃してしまう自分達人間の動作を、こうして人でないロボットから気付かされる点はとても新鮮です。
味覚から人体に影響の無いものか判断し、唾液によって食べ物を柔らかく、噛むことで細かくし、それを栄養とするために飲み込む。
1つ1つの動作に意味があることを棚卸しして考えると、無意識で漠然だった認識がより鮮明になり深く理解できるようになります。
勝手な妄想ですが、将来人類がソイレント(=食事をしなくても、飲むだけで人間の1日に必要な栄養素を全て摂取できる代物)のようなものだけで生きられれば、噛む動作も無くなり歯も顎もいらなくなるのでは、などつい考えてしまいます。
しかし、そんな妄想を繰り広げていると、次に斜め上過ぎる発言が飛び出します。
この食べられるロボット、自分で何かを食べてそれを動力源として動くロボットという意味だけでなく、ロボット自体も食べられたらおもしろいよね、と。
だって食べてみたいと思わない? ロボット。食べてみたいでしょ。お菓子やったら最高やん。ロボットの踊り食いみたいなんできる。
いや、本当にこのクレイジーさはさすがとしか言いようがありません。
研究者や何かを究める人たちというのは、こうした常人には無い想像力や発想が、その行動を支えているのだなぁと笑
ただ、そんな発言も単なる好奇心だけで述べていないことが、次の言葉からわかります。
でもね、ロボットが食べれるようになったらすごく生物的な感じがするはずだよ。だってロボットの目的って生物じゃん。生き物っぽくしようってやってたわけでしょ。生き物のひとつの定義は食えるってことだからね。だから食べれるロボット作ったら急に生モノっぽくなる。
ロボットの目的は生物。
何の前触れもなく、サラッとかなり重要な事を言っています。
もちろん、世間一般に知られている又は活用されているロボットは多様にあり、全てがこの通りではないことは事実です。
ですが、石黒教授が研究されているアンドロイド(=ヒト型ロボット)に関して言えば、いかにロボットを人間に近づけられるかが究極の目的となっています。
そして人は普段、それを気にしないで生きられている訳ですが、この自然において生物は皆食うか食われるかの存在でしかありません。
生き物であるなら当然当てはまるはずのその原則に、ロボットはまだなっていない。人がロボットに感じる不気味さや戸惑いは、そうした表れなのかもしれません。
人が動物に接するようにロボットに親近感を持つには、ロボット自体を食べられるようになる必要もあるのかなぁと。
ただ、実際のところ食べられるかどうかでなく、ロボットも同じ生き物として、人間の手で容易に殺せるか(無力化できるか)どうかの方が核心な気がします。
人は未知なるもの、知らないことに対して恐怖を抱く生物であり、もしもの時の対処法を知っているだけでも理性や平静を保っていられます。
生き物でないロボットには、自分達の常識が通用しない。これだけで人はロボットに恐怖を感じてしまい、食物連鎖の頂点に君臨してきた生物として、本能的に警戒心を強めてしまうことにつながります。
「食べれるロボット作ったら急に生モノっぽく」という発言には、そうした生物の持つ脆さや儚さを加える事が、生物に近付く一歩になると言っているのだと思います。
その後は、ロボットが正確に味が分かる(数値化される)ということは、本当にいいことなのだろうか?という疑問や、食欲や性欲の違いを、主観と客観で説明されていたりの内容が続きます。
記事元にはまだ4分の3ほどコンテンツが残っているため、この濃いインタビューを是非楽しんでみてください。
まとめ
ロボットを考えることは人を考えることだ!と言わんばかりに、その関係性や類似点を見出すことができます。
生き物とは何かを通して、ロボットを人間に近づける。また人間の性質として、自分以外の対象をいつでもどうにでもできることに安心感を、同じ生き物としての脆さに親近感を持つという点も独善的で人間らしい一面な気がしました。
当然人間にあるのはそれだけでありませんが、こうした事から人の一面を知る手がかりになるという点は非常に興味深かったです。
今後も石黒教授やロボット・AIなど事例を通して、学べる点をまとめていければと思います。