10月19日、中国国家統計局によって発表された中国のGDP統計(7-9月期)。その信ぴょう性についてはかねてより疑問視され、というよりそもそも信用されていませんが、今回はそんな中国経済を測る際、重要になってくる指標について整理していおきたいと思います。
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上記記事より「李克強指数」という指標を発見。経済の世界(特に中国経済)では常識なのだそうですが、初めて聞く用語だったため、今後の動向を押さえる上で取り上げてみます。
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中国共産党幹部ですら信じない中国の統計
中国共産党の一党独裁ということで、都合のいい数字をでっち上げることは朝飯前。担当者は正確な数字よりも、習近平氏が納得するような数字を優先させるため、今回も国家目標の7%と、市場予測の6.8%のちょうど間をとって6.9%にしたのだとか。
現代の民主主義国家ではありえないことを、平然とやってのけるあたり、いかにこちらとむこうの常識が異なるか思い知らされます。
党内部の人間も、当然そんな事情があることは百も承知なため、経済指標に頼らずなんとか手探りで経済政策を実施しているのです。
自国の出す数字が信用できないとは、なんたる苦行。
そんな事もあってか、現在首相を務める李克強氏が、遼寧省トップだった当時海外メディアに語ったことが元となり「李克強指数」なるものが生まれました。
それは、中国の経済指標の中でも比較的信頼のおけるものが、「電力消費量」「銀行融資」「鉄道輸送量」の3つである、というものです。
「電力消費量」
ここでの電力消費量は、主に工場や施設などの稼働率を示し、「工業」に関連する指標となっています。
ブルームバーグの資料によると、2009年から2011年末までは安定して前年比10〜20%成長を誇り、2009年末には前年に比べ40%増大した時期もありました。しかしその後、2012年から2013年末には5〜10%成長、そして直近の1年(2014年7月~2015年7月)では5〜-5%とついにマイナス成長に落ち込んできています。
このところ不調の続く中国では、外資の撤退や工場閉鎖が後を絶たず、その煽りを受けた形となっています。
「銀行融資」
銀行融資に至っても、不良債権の増加を受けてリスクの高いとされる企業(特に中小)へ融資を渋る傾向が高まりつつあります。
実体経済を支援し、景気減速を防ぐのに欠かせない銀行融資ですが、こちらの伸びも芳しくないのが現状です。
これまでも銀行融資の強化と借り入れコストの引き下げに取り組むよう、利下げや預金準備率引き下げといった策が講じられてきましたが、その効果は限定的。
先月も、市中銀行に低利の資金を供給することで農家や小規模企業などに融資が行き渡るプログラムを実施しており、今後の成果に注目が集まります。
「鉄道輸送量」
鉄道輸送量の前年同月比も2011年半ばの8%成長をピークに2012年にはマイナスへ突入。2013年に再度プラスに転じたものの、2014年から現在にかけてマイナス成長が続いているという状況です(直近2015年4-6月期は-10.9%まで悪化)。
鉄道輸送の約4割は「石炭」とされており、新たな産業用エネルギーが生み出されていく中で今後更なる変化が予測されます。
実はすでに時代遅れかもしれない「李克強指数」
「李克強指数」として3つの指標を紹介しましたが、実はここにも注意しておかねばならないことがあります。
まず、これら3つの指標に注目した李克強氏がトップだった遼寧省の産業が、工業、すなわち製造業を中核としていたという点です。
重工業への依存度が高い省の経済動向を測るのであれば、有効な指標だったかもしれない「李克強指数」も、産業構造のシフトにより、第三次産業(サービス)の割合が増加しつつある中、どこまで信頼のおける指数として機能するかは見定めなければなりません。
実際「電力消費量」であれば、確かに第二次産業における消費量は減っていますが、第三次産業では増加傾向にあるというデータもあります。
また、「鉄道輸送量」についても交通インフラが整備されてきたことが関係し、鉄道よりも道路を利用した貨物輸送量が増加の一途を辿っています(前年同月比の伸び率については鈍化傾向)。
構造転換していく中で中国を見つめ直すには、これまで以上に多角的な視点での分析が必要です。
今後「李克強指数」以外に中国経済を測るための指標はないかと問われれば、記事内でも言及している通り、他国間との関係上ごまかしの利かない貿易関連の指標(輸入総額など)あたりになってくるのでは、と考えられます。
中国経済の破綻は、そのまま日本にも大きな影響を与えるため、より一層注視していければと思います。
【参考】
・中国共産党も真実を知りたい 中国の経済状況を知る「李克強指数」とは? : http://blogos.com/article/131738/
・中国経済に起こっていることを電力消費量から読み解く – ZDNet Japan : http://japan.zdnet.com/article/35069545/
・中国経済「李克強指数」は正しいのか? |Economic Monitor 伊藤忠経済研究所: http://www.itochu.co.jp/ja/business/economic_monitor/files/2015/20151005_2015-050_C.pdf