様々な陶磁器、焼き物
目新しいものや流行りのものが瞬く間に消費されていく昨今、古くからの製法・技法を引き継ぎ不変の価値を提供し続けているものがあります。
それが、歴史や職人の技に裏打ちされた伝統工芸品や文化です。

時代の流れによってその見方・形が多少変わっても、その本質は常に変わらず何百年もの間人々に親しまれ続けている。

普段意識することはないものの、これって相当すごいことでは?
ということで、今回は伝統工芸品の代表格、焼き物・陶磁器について基礎から学んでみたいと思います。

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焼き物?陶磁器?土器?石器?

まず、焼き物といってもその種類には陶磁器や土器、石器など様々な種類があります。
それぞれどんな違いか気になりますが、土器と石器に関しては、縄文時代や弥生時代といった太古の昔に利用されていた焼き物が該当します。
縄文土器や弥生土器など聞いたことはあるかと思いますが、現在では植木鉢などに使われる以外に、利用されるシーンはほとんど無いようです。

次に陶磁器は、陶器と磁器の総称であると覚えておきましょう。
「陶磁器」という焼き物自体はこの世に存在せず、陶芸教室などで「陶磁器をつくりたい!」と言っても、どっち?と聞かれる事必至。
陶器と磁器は比べてみると一目瞭然なため、以下でしっかりチェックしていきましょう。

陶器と磁器の違い

陶器と磁器の比較画像
画像左が陶器、右が磁器となっています。見た目で「おーなるほどな!」とその違いがわかると思いますが、以下で項目別にその違いをまとめてみます。

陶器 磁器
原材料 粘土(陶土) 陶石
色合い 淡い色がメイン 純白で明度が高い
吸水性 比較的高い(浸透しやすい) 低い(浸透しにくい)
叩いて出る音 低く鈍い音 澄んで響く金属的な音

陶器と磁器。1番の違いを生んでいるのは、器に何の原材料が多く含まれているかという点です。

陶器には粘土、磁器には陶石が多く含まれており、原材料(土と石)による違いがそのまま器の特徴にも表れています。粘土の淡い色合いや陶石の生み出す光沢など、その素材だからこその性質がどう引き出されているかがポイントです。

ちなみに、いくら原材料が粘土だ陶石だといってもそれだけでできている訳ではありません。陶器にも石(珪石、長石など)は用いられ、磁器にも形状を保つ役割として一部粘土が含まれていたりもします。

粘土と陶石。それぞれの特徴を活かしながら焼き物は作られ、その配合の比率、種類によって日本全国様々な陶磁器が生まれてくるのです。

通っぽさを出せる部位の呼び方

さて、せっかくなので少し通な知識も学んでおきたいと思います。ここで注目するのは、陶磁器における各部位の名称です。
そもそも部位に正確な名前なんてあるの?と思われるかもしれませんが、調べてみると実はちゃんと決められているようです。

ちょっと知っているだけで通ぶれること間違いなし!ということでサッと確認していきたいと思います。

陶磁器各部位の名称
まずティーカップを例にとり説明していくと、はじめに、普段口をつける飲み口のことを「口縁(こうえん)」と呼びます。単に「口」と呼ぶ場合もありますが、何気なく使っている「飲み口」や「縁(ふち)」は正確な名称ではないとのこと。

そこから下っていき、ちょうどカップの中腹あたりを「胴(どう)」と呼び、そのまま底に向かう部分は「腰」となっています。身体の部位になぞった名称になっている点は、非常に興味深いところです。
そして、最も読み間違いしやすいのがカップの下部「高台脇(こうだいわき)」と「高台(こうだい)」です。思わず「たかだい」と呼んでしまいそうですが、高い地形を表しているわけではなく、ここでは卓や台に接する足のことを指します。
また、真下から見た際、高台の輪っか内を「高台内(高台裏)」と呼んでいます。

意外と見過ごしてしまう部分ですが、産地や種類によっては、この「高台」や「高台内」の形に違いや特徴が見られたりもするので、比べてみるとおもしろい発見があるかもしれません。

上記のような名称を知っておくと、今後お茶会に招かれたり、店先で陶磁器を見かけた際など、ちょっとした会話のネタとしても使えると思います。

「この飲み口すごい飲みやすそう」ではなく、「この口縁、とても滑らか」
「この外側の柄すごくかわいい」ではなく、「この胴の柄、素敵」
「この下の部分安定している」ではなく、「この高台(こうだい)安定感あるな」
など

知っていることをアピールする必要はありませんが、知っておいて損はない豆知識です。

焼き物・陶磁器名所全国マップ

陶磁器名所全国マップ
最後に日本全国の陶磁器を産地別にご紹介します。
各地でメジャーなものを取り上げてみましたが、個人的に聞いたことあるかも?程度の知識しかなかったため、これを機に名産品と呼ばれる焼き物はぜひ押さえておきたい思います。

東北・関東地方
福島県:会津本郷焼  栃木県:益子焼

東海地方
愛知県:常滑焼・瀬戸焼  岐阜県:美濃焼、渋草焼

北陸地方
石川県:九谷焼・大樋焼  福井県:越前焼

関西地方
京都:京焼  滋賀県:信楽(しがらき)焼  三重県:伊賀焼・萬古焼

中国・四国地方
岡山県:備前焼  山口県:萩焼  愛媛県:砥部焼

九州地方
福岡県:上野焼・高取焼  佐賀県:有田焼・伊万里焼  鹿児島県:薩摩焼

土器・石器から始まり、各地方それぞれで進化を遂げていった焼き物。その土地でしか得られない土や気候、様々に発達した手法によって独自性が育まれた過程は、モノづくりにおいて非常に興味深いものがあります。

「土から器を形成する」という作業からどうしてこれほどの多様性が生まれたのか。色々興味は尽きませんが、そうして長い時間かけて作られてきたモノだからこそ、ただの器ではない特別な重みがあるのではと感じます。

ちなみに、上記の全国マップでは紹介しきれなかったものの、熊本県の伝統工芸品「天草陶磁器」など一部の品はネットからでもご覧になれます。

天草の伝統工芸品:内田皿山焼オンラインショップ~日々の食卓を豊かに彩る上質な食器のお店~

お皿やお碗、マグカップ、くまモンの陶器セットなど、普段から手軽に使える陶磁器が揃っており、お土産やプレゼントにもドンピシャな商品がたくさんあるそうな。ぜひ一度覗いてみてはいかがでしょうか。