アクティブ・ラーニングトップ

新学習指導要領の発表に伴い、「アクティブ・ラーニング」という言葉が再度注目されはじめた今日この頃。
以前、アクティブ・ラーニングの様子をWebで視聴できるサービスを紹介しましたが、実際のところ教育現場でどうなっているかは全くの専門外。

▶ 第4回『アクティブ・ラーニング』フォーラム(全国教職員研修会) : http://active-learning.or.jp/

未来の教室には確かに必要だし、その動向は気になるところ。
ということで、今回はアクティブ・ラーニングの今を知れるイベント、第4回『アクティブ・ラーニング』フォーラムへとお邪魔し、その現状を伺ってきました。

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アクティブ・ラーニング関連のイベントでは日本最大級、300名を超える教育関係者が集結

アクティブ・ラーニングフォーラム全体

会場に着いて、まず面を喰らったのがその参加者の多さです。
アクティブ・ラーニングというと、どうしてもまだ現場に普及しきらず、都内の一部の学校だけが取り組んでいるもの、という印象がありましたが、それは全くの大間違い。

全国各地から集まった300名を超える教育関係者で会場は埋め尽くされ、関東圏はもちろん愛知、京都、広島などなど。言葉を交わす方のほとんどが、地方から出てこられていたという状況。
正直、これほどアクティブ・ラーニングが広がり、各地で実践されているとは、全く認識が追いついてなかったなと。

そして、そんな熱意ある参加者を迎えるのは、こちらも選りすぐりのメンツが揃った8名の登壇者。発表の内容と共に以下に引用していおきますが、なんといっても注目は、あのアクティブ・ラーニングを国の中枢で引っ張ってきたご本人、下村博文元文部科学大臣の登壇です。

①映像翻訳のプロによる英語字幕制作ワークショップ
 石井 清猛 氏(日本映像翻訳アカデミー チーフディレクター)

②アクティブ・ラーニングを学力向上につなげる『AL指数』と『R80(アールエイティー)』
 中島 博司 氏(茨城県立並木中等教育学校校長 全国高校校長協会教育課程研究委員長・常務理事)

③デジタルハリウッド大学におけるアクティブラーニング
 杉山 知之 氏(デジタルハリウッド大学 学長 工学博士)

④ご挨拶並びにご講話
 下村博文 氏(元文部科学大臣)

⑤「!?♡」→ 「地元で幸せに生きる。キャリア教育とアクティブラーニングの融合」
 鈴木 映司 氏(静岡県立韮山高校教諭)

⑥一瞬で生徒の心をつかむ、学習効果の高いエンターテイメント型アクティブラーニング
 渋谷 文武 氏(一般社団法人キャリア教育協会代表理事 株式会社インタメプロダクション代表取締役)

⑦アクティブ・ラーニングだから成績が上がる
 西川 純 氏(上越教育大学教職大学院教授 一般社団法人アクティブ・ラーニング協会顧問)

⑧「eポートフォリオ/学習記録データを活用したアクティブ・ラーニングと学習評価」
 森本 康彦 氏(東京学芸大学准教授)

アクティブ・ラーニングフォーラム、下村博文氏
スタートしてから4回目を迎える本フォーラムですが、すでに元文部科学大臣を呼べてしまうほどバリューを持つ場になっているとは、相当スゴイことなのでは。どうやって実現したのか、関係ないところでやたら気になります。

その他、産学官問わず選びぬかれたアクティブ・ラーニングのスペシャリストが、当日の会場を大いに盛り上げるアクティブな講演を展開。

個人的には、着いてすぐに始まったデジハリ学長杉山氏の講演や、ロイロノートを活用した授業を行う韮山高校鈴木教諭、アクティブ・ラーニングが学力向上につながると、シンプルにそして明快に話された上越教育大学西川教授が特に印象的でした。

簡単に今振り返ってみても、聴いてて随分ワクワクしたなと。

③ デジタルハリウッド大学におけるアクティブラーニング

アクティブ・ラーニング、杉山知之氏
デジタルハリウッド大学の杉山学長は、自身の大学で実践されているアクティブ・ラーニングの紹介や、そのメソッドだけでなく、多様な人材との交流を促す”環境”を整えることもまた、”アクティブ・ラーニング的発想”であるとして、学内に知的交配をもたらす様々な仕掛けを設置。
そして、アクティブ・ラーニングに取り組み校内で孤立しがちな先生方に向かって、「バカにされよう。世界を変えよう。」というメッセージで激励していた点が、個人的にとても刺さる発表でした。

⑤ 「!?♡」→ 「地元で幸せに生きる。キャリア教育とアクティブラーニングの融合」

アクティブ・ラーニングフォーラム、鈴木映司氏
フォーラム参加者とのワークをこなし、ロイロノートを駆使しながらの講演となった、静岡県立韮山高等学校の鈴木教諭。
すでにキャリア教育やアクティブ・ラーニングにおいては有名な方だそうで、講演内容もさることながら、特にロイロノートを使いこなした授業に感心させられました。
講義では問いを投げかけ、その答えをロイロノートに投稿させる。それだけで、授業が終わった後でも手軽にフィードバックできる状態が生まれ、限られた授業時間を空間と共に拡張することに成功しています。

やっていることはかなりシンプルなのに、実演されるとこりゃ便利ですわ!と納得せずにはいられない、ICT活用の好例を見させていただきました。

⑦ アクティブ・ラーニングだから成績が上がる

アクティブ・ラーニングフォーラム、西川純氏
アクティブ・ラーニングで本当に学力が上がるの?と思っている方には、是非とも聴いて欲しかった講演が、上越教育大学西川教授のものです。
「授業をすればするほど教えるのはうまくなる」という教員の常識を真っ向から否定し、授業がうまくなることで気づけなくなる生徒たち(特に下位層)のつまずきやすいポイントは、同じ生徒でなければわからないと言います。
そして、だからこそ生徒同士の学び合いを創発する、アクティブ・ラーニングが効果的なのであり、学力向上を実現する有効な手段だと結論づけていました。

10年前の教室になかった学びが、ここにある

今回の登壇者は8名でしたが、実際は参加者側の先生の中にも、すでに多様なアクティブ・ラーニングを実践しておられた方が多くいらっしゃいました。
質疑応答の時間も積極的にアドバイスを求める様子から、すでにアクティブラーナー(能動的学習者)としてこの場に来ている先生方は、やっぱり違うなと。

自分が高校生だった10年前と比べると、間違いなく今の教育は変わってきていると感じましたし、地に足の着いた議論・ディスカッションをされていることが何よりの証拠かと思います。

また、自分の中での学びとして、多くの事例を通してアクティブ・ラーニングに触れることで、決まりきった形やスタイルがある訳ではないことを、改めて理解できました。
あくまで「教室にいる子供たちをアクティブラーナーにすること」が目的であり、そのための手段を、先生方が試行錯誤して見つけ出す、ということが今の教育に求められていることだそうです。

旧態依然として変わらないと言われ続けてきた学校教育に、今本当の変革期が来ている。
そう感じずにはいられませんし、正直ここまで持ち上げる気はありませんでしたが、本当に未来の教室を見せてくれるフォーラムだったなと、行って本気で良かったと思います。

ちなみに、フォーラム自体はこの規模にも関わらず、年3回ものハイペースで実施されているそうで、見逃した方はぜひ次回足を運んでみてください。

2016年はアクティブ・ラーニング・セカンドステージとのことで、今後さらに広まりながら、これまでの教育で報われてこなかった子供たちが救われる未来になっていって欲しいと切に願います。