つい最近、中学校の教員である友達と話していたところ、PISAにおける日本の成績が思いの外よくて驚いたという話を聞きました。
明るい話題の少ない教育界において喜ばしいニュースであり、詰め込み教育の弊害を唱えられてきた現場は、一矢報いる結果になったのかなと。
今回はこのPISAの結果を受けて、詰め込み教育と北欧などに代表される思考型教育について考えてみます。
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PISAとは?
15歳児を対象にした学力到達度調査(通称PISA)は、2012年に世界65の国と地域で実施され、約51万人の生徒が参加しています(参加国・地域は年々増加)。
調査科目は「読解力」「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」の3分野で、2000年から3年ごとに行われ、今年行われたものを除けば2012年が最新の調査です。
調査についての詳細は以下のリンクからご確認ください。
▶ OECD 生徒の学習到達度調査 〜2012年調査国際結果の要約〜http://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/pisa2012_result_outline.pdf
北欧も抜き去り国別では全分野で1&2位を独占
(出典:上、PISA2012年結果。下、PISA2009年結果)
これまでの調査では、成績的に低い訳ではないものの中国や韓国、北欧などに上位の座を明け渡してきました。
特に2000年から2009年にかけて、日本は全分野で成績を落とし、詰め込み教育の限界や低迷期を経験。教育方針の転換やその打開策が求められてきました。
しかし、今回最新の調査によると、日本は「読解力」「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」全ての分野で2009年の得点を上回り、フィンランドやスイスといった上位ランカーを軒並み抜く結果となりました。
さらに注目したいのは、日本より上位に位置する「上海」「香港」「マカオ」「シンガポール」については、”国”という括りでなく”都市”での参加となっているため、国別のランキングでみると、実質日本が「読解力(1位)」「数学的リテラシー(2位)」「科学的リテラシー(1位)」と教育国としての地位を確立しています。
あれっ、思った以上にすごい、何これ。
二元論で終わらないために
今回の結果を受けて、日本は前回よりも得点自体をアップさせているため、単純に他国の変動だけでランクが上がった訳ではなさそうです。
また、日本以上の詰め込み教育で有名な韓国も、各分野で国別上位5位にはランクインしています。
その反面、北欧の中でも上位に君臨していたフィンランドは、全科目で得点を下げランキングも大きく後退しています。さらに、スウェーデン、ノルウェー、デンマークなど思考型教育の代表とされる各国は、2012年のランキングで20位以内に入ることはありませんでした。
各国の状況や目指すべき社会像によって、教育の方向性は異なるため単純な比較はできません。
ただ、今後日本でも思考型教育に取り組んでいくのであれば、今回北欧各国がランクを落とす結果となった原因を明らかにすることが重要で、その他教育政策との兼ね合いも勘案する必要があります。
そんな中おもしろいと感じたのは、今回の結果だけを見れば、逆に「詰め込み教育だからこそ」この成績を達成できたといえる点です。上海、香港、韓国などのアジア地域では、日本と同じ詰め込み教育、知識教育が重視されているのが現状。
各国の学力をスコアで競うだけなら、そのスタイルが有効かもしれないということを、世界規模の調査が明らかにしています。
もちろん、テストの点数だけで個々人や社会の豊かさが決まるわけでないことからも、要はこうして15歳までに身に付けた世界トップクラスの基礎学力を、いかに高校・大学で発展させられるか、ということだと思います。
高校と並び、特に大学であれば点数を取るだけでなく、いかに自分の人生や社会に役立つ学びを深められるかが重要です。その学びに対する見方・姿勢を、段階に応じて上手く切り替えていける仕組みができれば、今後さらに良い教育を提供できるのではと考えます。
実際のところ「詰め込み型」か「思考型」か、といった二元論に終止するレベルはとっくに過ぎ去っています。今後はここからどのようにハイブリッドさせていけるかを主眼に置き、議論を重ねていかねばなりません。
詰め込んだ知識があるからこそ、より深く考えることができる。考えるからこそ、更なる知識が定着する。どちらも相互に関係し合うものだからこそ、そのバランス・すり合わせが鍵となっていきます。