世界を変えた10冊の本

教養といっても何を読んでいいのかわからない、という方は結構多いと思います。
基本的にオススメするのは、①人類史・歴史 ②経済・金融 ③文学 ④宗教・哲学 あたりですが、それでももっと個別の書籍を知りたい、という方に読んでいただきたいのが『世界を変えた10冊の本』です。

池上彰氏が選ぶ10冊は、どれも長い間世界中で読まれてきた本ばかりで、市場にさらされながらも残ってきた人類の英知と言える作品です。
タイトルを見ると、難しそうに思われるものもありますが、その理解の手助けとなる前提知識を授けてくれるのが本書の役割となっています。

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目次とコンテンツの概要

世界を変えた10冊の本目次

第1章 アンネの日記
第2章 聖書
第3章 コーラン
第4章 プロテスタンティズムの論理と資本主義の精神
第5章 資本論
第6章 イスラーム原理主義の「道しるべ」
第7章 沈黙の春
第8章 種の起源
第9章 雇用、利子および貨幣の一般理論
第10章 資本主義と自由

聞いたことがある、もしくはすでに読まれている本もあるかもしれませんが、それだけ有名な本しかあげられていません。
学生の時に挑戦したけど挫けてしまった、読んでみたいけどまだ読んでいないという方は、是非池上氏の解説を参考にチャレンジしてみてください。

10冊をもっと楽しむ・理解するにあたっての前提知識や大切な視点を与えてくれます。
以下、3章までの簡単な概要です。

第1章 アンネの日記

なぜ、この本が「世界を変えた」のかと疑問の方もいらっしゃることでしょう。中東問題の行方に大きな影響力を持っているから、というのが、私の答えです。

冒頭で池上氏はこの本の紹介に際し、10冊に選んだ理由を以上のように述べています。

1人の少女の日記が、なぜ国際問題に影響を与えているのか。
アンネの日記には、ユダヤ人迫害の憂き目に遭いながらも懸命に生きる13歳の少女が、試練を乗り越えユダヤ人としての強さ・誇りを自覚する15歳までの記録が残されています。

警察官が隠し扉の直前まで迫った瞬間、アンネが悟ったユダヤ人としての使命。
15歳の少女がここまで思い、ここまで強くなれるのか!?
そう思わずには入られないありったけの覚悟の言葉は、平和ボケした現代の自分たちに強烈に突き刺さるのだと思います。

池上氏は『アンネの日記』が国際社会に影響を与えた素晴らしい作品であると同時に、その与えた影響により新たな苦しみ、困難が生み出されているとすれば、アンネはどんな日記を書くのだろうかと問いかけています。

第2章 聖書

世界最大のベストセラーであり、欧米キリスト社会の根幹を成すとされる『聖書』。
ある時は平和な社会を築く礎となり、ある時は「信仰」の名のもとに争いの火種ともなる宗教とはどういうものか。
日本人には馴染みのない思想や考え方を、欧米文化とリンクさせながら解説し、『聖書』を読む上での基礎を与えてくれています。

「旧約聖書」と「新約聖書」の違いなど、当たり前と思われている知識を池上氏が整理して解説してくれるため、『聖書』がどのように現実社会に影響を与えているのかなどに気付くヒントとなります。

第3章 コーラン

『アンネの日記』からユダヤ教、『聖書』からはキリスト教、そしてこの『コーラン』からイスラム教についての理解を深めるという並びになっています。
3つの宗教はともに、唯一絶対の神がこの世界を創造したとする一神教であり、「旧約聖書」「新約聖書」に加え、3つ目の経典『コーラン』を持つのがイスラム教です。

現代社会を度々騒がせ、印象としてはあまり良いイメージを持たないイスラム教も、実は3つのグループに大別される。その内、現に騒ぎを起こしている「原理主義過激派」と呼ばれるテロ組織は、いかにして生まれてきたのか。
『コーラン』を読むだけでなく、時代の流れと照らし合わせた理解が物事の本質を突きとめていきます。

名著への抵抗を無くす、入門書としての役割

本はどんなものでも、ただ読んで満足するというだけでなく、その内容を通して現実世界をみることで一体何に気付き、何を得られるのかを考え、想像を膨らますものだと思います。

ただ、難しい本や専門外の本を読もうとすると、すんなり頭に入ってこないことが多々あり、何が言いたいのか、何を面白いとしているのかわからなくなってしまう場合がある。
そんな時、本書のような入門書ともいえる本から、それらの前提知識やチェックポイントにアタリを付けておくと、理解がグッと深まり満足のいく読書体験を経験できます。

もちろん、その前提知識や見方が邪魔して、それ以外の視点から自由に読めなくなる場合もありますが、そこは池上氏の上手い所。
知識や見方を話に沿って縛り付けるのでなく、丁寧に紹介しながらあくまで要所の判断は読者にゆだねるというスタンスを一貫しています。

物事を理解して学ぶことは確かに大事。けれど自分が何を感じ、どんな意見を持ったのかが読者自身のためになると言っているような進め方に、受け身でない読書の意味を学ぶことができます。

読書の仕方についても顧みれる本書は、名著読破のパートナーになると思います。
普段時間が無くて、しっかりとした読書体験を積めていないという方にも、効率よく読むための価値ある1冊になるはずです。

まとめ

正直この本だけで、なぜか10冊を読んだ気になれてしまうほど、簡潔に、そしてわかりやすくエッセンスがまとめられていました。

宗教と経済についての作品が主な内容でしたが、変なテクニカル本ではなく、ド直球の原点にして頂点の名著が並べられ、もはや覚悟して読むしかなかろうという決意にもなりました。

今年中にはなんとかして、この10冊に挑戦できたらと思います。できるかな。。