読書の技法

本日は、何を読むかではなく、本を”どう読むか”をメインに取り上げた書籍です。
著者は元外務官僚で現在作家をしている佐藤優氏。ただの読書好きや研究家ではなく、バリバリの実務家として活躍していた著者が、本から何を学び、どう活用してきたのか。

過去、外交官として日々膨大な情報に接し培ったノウハウを、読書に転用し技法とした本作品。
現在も月間300冊以上に目を通しているという情報処理のノウハウを、まとめてみたいと思います。

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目次とコンテンツの概要

読書の技法目次

第 Ⅰ 部 本はどう読むか
 第1章 多読の技法
 第2章 熟読の技法
 第3章 速読の技法
 第4章 読書ノートの作り方
第 Ⅱ 部 何を読めばいいか
 第5章 教科書と学習参考書を使いこなす
 第6章 小説や漫画の読み方
第 Ⅲ 部 本はいつ、どこで読むか
 第7章 時間を圧縮する技法

まず本書は、本の読み方に焦点を当てながらも、物の見方や考え方、表現の仕方にまで踏み込んだ「知の技法」としての入門書である、としています。

読書をただ楽しむ、速読法を学ぶというだけでなく、読書で得た知識をどう仕事に活かすのかというメソッドを、著者の経験を踏まえ総合的にまとめたものです。

第Ⅰ部では、「多読」の重要性を訴え、限られた時間の中で「何をしないか」「何を読まないか」も大切な知の技法であるとし、それを判断するための手段として「速読」を。そして、より深く理解するために「熟読」「読書ノート」を用いるという構成になっています。
その部分をメインに、要諦をかいつまんでおきます。

第1章 多読の技法

・重要なのはどうしても読まなくてはならない本を絞り込み、それ以外については速読することである
・速読する場合、その本に書かれている内容についての基礎知識が無ければそもそも速読はできず、ただ指で本のページをめくる運動にしかならない
 →基礎知識が身についているのならば、既知の部分をどんどん飛ばし、未知の内容を丁寧に読み込む
・我流で字面だけを追う読書は、特に難しい本の場合、誤読する可能性が高いので、むしろそういう読書はしないほうがいい

読書(多読)の要諦は、基礎知識をいかに身につけるか
 →基礎知識は熟読によってしか身につけることができない
 →しかし熟読できる本の数は限られる、そのため本を絞り込む、時間を確保するための本の精査として速読が必要になる

第1章では、「多読」と「熟読」と「速読」の関係性について触れています。
多読には速読が必要、速読するには基礎知識が必要、基礎知識をつけるためには熟読が必要、といった具合です。

これまで速読とは、小手先のテクニックで読書スピードを上げるもの、と思っていました。
ですが、佐藤氏の述べる速読は、いかに内容を取捨選択して、必要な情報だけを拾って読み進めるか。その必要・必要でないを判断する基礎知識の上に速読が成り立っているとあり、この点はすごく納得できる部分でした。

速読はすぐにできるノウハウなどでなく、日々学んでいく先に必然として身につくスキルだ、という印象を持ちます。

第2章 熟読の技法

速読術とは、熟読術の裏返しの概念にすぎない
 →熟読術を身につけないで速読術を体得することはできない
・知りたいと思う分野の基本書は、3冊か5冊の奇数で購入すべき
 →奇数である理由は、定義や見解が異なる場合多数決で決めれば良い
 →ちなみに有識者に助言を求める際も、数は奇数にしたほうがよい
 →学術的な真理は本来、多数決とはなじまないということをよく念頭に置いた上で、日常的には暫定的に多数決に従って知識をつけるしかない
・知識をつける際は、上級・応用の知識をいっぺんにつけようと欲張らない
・最新学説を追う必要はない
 →最新学説が学会で市民権を得るのに10年くらいかかり、それが入門書に反映されるにはさらに10年かかる
 →よって、入門書で得られる知識は20年くらい前のものだが、それでいいと腹をくくる
現実の出来事を説明できなければ、本物の知識は身についていない
 →重要なのは、知識の断片ではなく、自分の中にある知識を用いて、現実の出来事を説明できるようになること

熟読の技法
① まず本の真ん中くらいのページを読んでみる〈第一読〉
② シャーペン(鉛筆)、消しゴム、ノートを用意する〈第一読〉
③ シャーペンで印をつけながら読む〈第一読〉
④ 本に囲みを作る〈第二読〉
⑤ 囲みの部分をノートに写す〈第二読〉
⑥ 結論部分を3回読み、もう一度通読する〈第三読〉

途中話が逸れる部分もありますが、重要だと感じた点をピックアップしています。

「速読術とは、熟読術の裏返しの概念にすぎない」
「最新学説を追う必要はない」
「現実の出来事を説明できなければ、本物の知識は身についていない」

どれも読書において、また、自分の知識において普段勘違いしてしまいがちな点を、バッサリ斬り捨てています。
本から情報を得る、ことについて割り切った姿勢で臨むことの重要性や、自分自身の基礎知識について改めて確認する必要性を感じさせます。

また、熟読の技法として6つのステップをあげ、各ステップ具体例を用いた説明がなされます。基本的に1冊につき3回読み返すことを前提とした熟読法です。

字面だけを追うと、そんな事かと感じてしまいますが、なぜ本の真ん中からなのか、囲む分量の比率は全体量からどの程度か、一読目と二読目のペース配分は、など細かな指摘が多く、だからこそより効果的な熟読ができるのだと納得できます。

第3章 速読の技法

速読の目的は、読まなくてもよい本をはじき出すこと(選別すること)

・速読には「普通の速読」「超速読」の2種類がある
400ページ程度の一般書や学術書の場合
 →普通の速読:30分程度で読む技法。その後30分かけて読書ノートを作成
 →超速読:5分程度で読む技法。ほぼ試し読みといえる
  →試し読みによって以下4つに分類する
  ① 熟読する必要のあるもの
  ② 普通の速読の対象にして、読書ノートを作成するもの
  ③ 普通の速読の対象にするが、読書ノートは作成する必要がないもの
  ④ 超速読にとどめるもの

普通の速読の技法
① 「完璧主義」を捨て、目的意識を明確にする
② 雑誌の場合は、筆者が誰かで判断する
③ 定規を当てながら1ページ15秒で読む
④ 重要箇所はシャーペンで印をつけ、ポストイットを貼る
⑤ 本の重要部分を1ページ15秒、残りを超速読する
⑥ 大雑把に理解・記憶し「インデックス」を付けて整理する

などなど。
速読の目的と、速読にも2種類あることを紹介している第3章。

「時間は有限であり希少財である」という大原則を忘れないことや、速読が内容を理解するものではないことなど、速読に絶対必要な心構えやポイントが書かれています。

第4章 読書ノートの作り方

・読書ノートを作る意味は記憶の定着にある
→読書後30分かけて補強作業をするとよい
どの箇所を抜き出すか、その取捨選択も記憶への定着に大きく寄与する
・緩い形で読書の習慣がついてしまうと、いくら本を読んでも知識を取り入れても頭の中で定着しない
・抜き出すポイントは、自分が特に重要だと思った箇所で構わない、または現時点では理解できなくても、重要だと推察される所も1〜2箇所、抜き書きしておくこと
・抜き出した箇所につけるコメントは、賛成・反対やこの考えに違和感といった自分の判断を示すもので十分
なんでも一言でいい、何らかの判断を下すことが極めて重要
→次のステップで、判断+意見を交える

読書ノートを作るなんて時間の無駄だ、という批判に対して筆者は上記のポイントをあげ否定しています。

確かに、本を読んだだけで満足してしまいその内容をまとめることが疎かになる・または無駄だと思ってやり過ごすことは結構あります。
ですが、その後のためにも二度手間三度手間を防ぐ意味で、必ずやっておくべきとしています。

まさに正攻法であり、その価値をわかっている筆者だからこその主張だと感じます。


第Ⅱ部以降では、さらにどんな本を読むべきかというポイントに踏み込み、ビジネスパーソンに必要な教養を学べる本とその具体的な勉強法についても言及しています。
当ブログ的には、そちらも取り上げるべきと思いましたが、そこは追々紹介できればと。

ビジネスパーソンに必要な本が、実はみなさんにも身近な本であったり、本を読むための基礎知識をチェックする方法にそんなやり方があるのか、とまだまだ新しい発見を多く見つけられる本書。

それに加え、折に触れ紹介されている筆者のノートから、どういった使い方をすればよいかや、この位使えるようになればひとまず問題無し、といった技法取得の目安になるパートもあります。

ページ数自体も279ページとそこまで負担にはならないため、まずは一読してみてそのエッセンスに触れてみてください。

まとめ

これまで読書というと、丁寧に一文字目から最後まで読むという習慣があり、ついそれが面倒で読書しなくなってしまったことがあります。

今回本書から改めて学んだことは、本を読むという行為はあくまで手段であり、その目的は自分にとって必要な情報を得ることだということです。
せっかく買った本だから、一字一句丁寧にと思って読んでいると、結局時間を無駄にしているだけで、必要な情報にいつまでも辿りつけない。

時間があるならいいですが、忙しい中でも読書をこなすなら、ある程度割り切ることが必要だと感じました。

目的を持って本を読むこと、という点はつい忘れてしまいがちなため、まずそこを意識して今後の読書に活かしていければと思います。