今日は、Twitterでいつも有益なツイートをされている髙橋一也先生の以下つぶやきより。

創造性ってなに? 創造的な仕事をするためにどうすればいいの!?
いや、漠然としてました。それが大切だと思いつつ実際きちんとわかっていましたっけと。

参考は上記ツイートにもありますが、東京大学大学院 教育学研究科・情報学環の岡田猛教授が書かれた「心理学が創造的であるために ―創造的領域における熟達者の育成―」をもとに、インプットしたことと気づいたことをメモっておきます。

創造的であること と 熟達すること

創造性と熟達
まず、創造的な仕事をするには、その領域での熟達(長い期間訓練を積むこと)が必要と言われています。ただ、その創造と熟達にはある種のパラドックスが存在すると岡田先生は言います。
それが、

すなわち、創造のために熟達化が必要であるということと、まだ熟達化していない人びとが創造的な仕事をするということのパラドックスである。

というもの。

確かに、素人考えや門外漢の意見が斬新な発想を生み出すケースはよく耳にします。
この部分を、「熟達」と「創造に必要なプロセス」に分けて整理し、それぞれの関係性を考慮しながら、そのパラドックスを紐解いていきます。

熟達するとは

まず、熟達することで「何を得られるか」「熟達するにはどうすればいいか」、を論文より抜き出します。

● 何を得られるか
1)構造化・体系化した領域知識の習得
2)メタ認知能力(プランニング、モニタリング、問題の評価、方向性の決定などのスキル)

● 熟達するにはどうすればいいか
1)ある程度の才能  2)内発的動機づけ
3)課題にかける時間  4)よく考えられた練習
5)知識の構造化のための方略 6)社会的サポーター
7)社会的な刺激

創造に必要なプロセス

次に、創造的領域(芸術、科学など)で実績を上げた熟達者たちが持ち合わせていた能力として多いものを以下3つあげています。

① 新しいアイデアやコンセプトの生成
② アイデアを形にするための技術や知識
③ 適切な評価や位置づけ(メタ認知)

_______
上記より、まず

・熟達化により、創造に必要なプロセスの②、③を高めることができる
・ただし①については、熟達することで同時に高まるものではなく、かえってそれを阻害してしまう可能性がある
→蓄積されすぎた知識が認知的制約となり、創造を抑制してしまうケースなど本論で4つの阻害が生じるケースについて言及しています

それらをもとに、①のアイデアやコンセプトの生成に関してだけ言えば、その領域で経験を積んだ熟達者が必ずしも長けているわけではない。
ここで、常識にとらわれない若い人、素人、異なる文化の人、他分野の研究者などによって、新しいアイデアが生成される可能性が存在することを持ち出し、パラドックスの一端にふれています。

ただ、そうした素人などがいつも斬新な発想を生み出せるわけではなく、当然、時と場合によってであり、いつも有効とは限らない。
ではどうするかというと、創造的な仕事をするという点であれば、別に1人の人間が①〜③すべてのプロセスを担う必要はなく、チームや組織として各プロセスを分担して行うことで、創造的でいることができる。
とはいえ、熟達した人物が全く新しいアイデアを生み出せない訳でもなく、熟達者は、「自分がもっている様々な制約に気づき」「それを操作する」ことによって、素人では成し難い、優秀な発想を“コンスタント”に生み出していけるようにもなる。

創造的領域での熟達化にとって大切なことは、素人のままであり続けるということではなく、①アイデアを生成し、②アイデアを形にし、③アイデアを評価するという、創造活動の三つの側面のすべてにおいて、何らかのかたちで熟達化していくことである。〜(中略)〜このような三つの側面を兼ね備えた熟達者を創造的熟達者(creative expert)と名付け、そのような熟達者になることを創造的熟達化(creative expertise)と呼ぼう。

上記では、大分端折って創造性と熟達についてまとめていますが、本論文では、他にも興味深い事例が数多く引用されわかりやすい論調となっているので、ぜひ目を通してみてください。

創造的な華やかさと、熟達の地味さ

創造的熟達者、、なるほど。。
やはり自分がある分野に詳しくなっていくほど、頭でっかちといいますか、偏った知識ばかりになってしまうのではという不安はあった気がします。

ただ、そうした自分を認識して、それを踏まえ制御することで、柔軟な発想も技術によって生み出していける。
この点は、なるほど!と思いつつもそれだけではダメなんだろうなと。きちんと日頃からそのことを認識して、やろうとしないと身につかないものなんでしょうね。。

特に、セオリー通りに打つ施策、当然のようにこなすタスクは、これまでの経験や知見に基づきある種自分の中で最適化されているものですが、やはりそんな時に「それってほんとにそうなの?」と。

時間との兼ね合いでできることは限られますが、すべてでなくても重要度の高い仕事と向き合う際は、今一度過去の自分の当たり前で仕事をしてしまっていないか、何のためにやっている仕事なのかを自問することは意識的にしていこうと思います。

また、熟達していくための1つの要素に「5)知識の構造化のための方略」というものがあったのですが、この中で仰っていた「自己説明」という活動はまた非常に面白いなと。

自己説明とは、人が何らかの新しい概念を学習する際に、それがどのような場面で使えるのか、どのような結果をもたらすのか、どのような意味を持つのかを自分に問いかけ、その説明を考えることを意味している。

要は、学んだことを自分の言葉で説明(アウトプット)してみ、ということなのですが、やはりこれも「わかっているけどできていない」案件ですね。

本を読んで読みっぱなし、調べ物して調べっぱなし。
その場でわかった、使えたつもりでも、後で思い出しても残っておらず自分の中の蓄積になっていないという点、、すんごい心当たりが。。

ということで今回この論文を読んで、上記アウトプットがてら記事にしてみましたが、やはりわかったつもりでは、こんな記事1本も満足に書けないんですよね。。
ポイント同士のつながりや、因果関係、どこまで言い切っていて、どこまでふんわりしているのか。自分の思い込みでないか、無理やり論旨をつなげようとしていないかなど。

わかったつもりでいるのと、きちんと理解して(しようとして)アウトプットするのとでは、訓練の強度がまるで違うと改めて感じさせられています。
あぁ、サボってきたつけが。。笑

ということで、創造的なかっこいい仕事をしたいと思っても、その前段には、めちゃくちゃしんどい積み重ねや訓練が必要とは、これもまた当然ですね。
まずは、引き続き努力しながら、それがどのプロセスを高めているのかも意識しつつ取り組んでいきます〜。

その他参考:岡田猛教授(東京大学大学院 教育学研究科・情報学環)-アートに触れることで クリエイティブな発想力は鍛えられる | ART HOURS | ビジネスにアートの力を!

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