教科指導や生徒対応、テストの採点から行事の準備、委員会対応から部活動の顧問まで。
多岐にわたる先生の仕事には、何が求められどんなスキルが必要なのか。
これまでわかっていたつもりで整理しきれていなかった部分を、個人的に聞いてきた先生の声からまとめていきたいと思います。
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“教える”ことだけじゃない、教員の必須スキル
上記図は、教員が現場で求められているスキルを、大きく6つに分けてみたものです。
こうしてみると、改めてすべき仕事が多いことがわかります。子どもの頃は、先生の仕事は授業をすること、というイメージしかありませんでしたが、授業とは直接関係無い部分でも、想像以上に幅広い業務をこなしています。
1,ティーチングスキル(学習全般指導)
言わずもがな先生のド本分であるティーチングスキル。
いかに授業をわかりやすく伝えるか、どんなペースで進めれば各教科への理解度を高められるか。単発の授業におけるわかりやすさと、年間・学期トータルでのカリキュラム調整・完遂も目指し、日々試行錯誤を繰り返します。
授業自体の創意工夫と共に、生徒からの質問に答えられる先生自身の知識量や、疑問点を明確にし理解を促すコミュニケーションも求められます。ただのプレゼンスキルとは異なる、総合的な指導能力です。
2,コーチングスキル(学習動機)
ティーチングスキルと両輪で、生徒の学力を高めるに欠かせないのがコーチングです。
コーチングとは、生徒個々に寄り添いながらやる気・主体性を促し、自ら行動するための働きかけやきっかけを与えるスキルになります。
わかりやすい授業を心がけるのはもちろん、生徒のやる気を引き出し、いかに主体性を伸ばせるかという点も教員の腕の見せ所。
受け身な姿勢から、どう生徒側からの興味関心を引き出せるか、その教科のおもしろさや将来性を伝えてあげたり、適切な目標設定をしながら伴走者として生徒の背中を押していきます。
(ご指摘いただき、「主体性を促す・伸ばす」という表現に違和感はありますが便宜上使わせていただいています)
3,マネジメントスキル(学級運営)
生徒間の付き合いやグループ同士の関係性を把握し、円滑な学級運営をするために発揮されるスキルが、マネジメントです。
いじめや仲間はずれなど、クラスの揉め事やトラブルに気を配ったり、行事やイベントの際には、目標達成のサポート・盛り上げ役となりクラスの団結をはかります。
生徒の主体性を尊重しつつも、要所でうまく助言をしながら、クラスの雰囲気をどう高めていけるかが問われます。生徒に過ごしやすい環境を提供することに関わってくる部分です。
4,カウンセリングスキル(心理ケア)
マネジメントで学級全体を見つつ、個別で生じてしまった問題に対処していくスキルがカウンセリングです。
クラスに馴染めず浮いてしまっている子どもや、思春期特有の悩みや問題を抱える生徒の、よき相談相手となることが求められます。
親以外に話せる身近な大人として相談された際も、心理学やカウンセリング系の知識・スキルを付けておくことで、より適切なアドバイスが可能です。
保健室の先生や、専門のカウンセラーがいるかもしれませんが、そこまでたどり着けず1人で悩んでしまう生徒も多いと聞きます。どんな生徒がどんな悩みを抱えてしまいがちか、普段から近くにいる先生が少しでも知っていることで、とれる手段が大きく変わっていきます。
5,事務、雑務対応スキル
教室から離れ、主に教員自身の業務処理に関わるスキルです。
授業で必要なプリントの作成や、テストの採点・成績付け、保護者向けのしおり作成や面談調整、部活動の顧問、職員会議、学校行事の準備など。
ただ教えればよいだけの塾講師と最も異なる部分が、この事務作業・雑務の多さです。書類作成やデータ入力・管理など、民間企業であればアウトソーシングできる仕事も、予算の都合や個人情報等の関係で難しいのが現実。
教育に力を入れたいと考える教員も、まずはこれらの業務をいかに効率よくこなせるかが課題となっており、そのためのさばくスキルを身に付ける必要があります。
6,コミュニケーションスキル
普段、職員室での何気ない人間関係から、会議や委員会でのやり取り、行事・イベントごとの役割分担など。さらに意欲ある教員は、自身のスキルアップのため、他校の教員や専門家ともつながり、学校内外に渡ってコミュニケーションをとっていきます。
他のスキルに比べて、教員特有というものではありませんが、基本だからこそしっかり身に付けておくべきスキルでもあります。
生徒の学力を伸ばすスキル、学習環境づくりのスキル、自分の時間を作るためのスキル
以上、6つのスキルをあげてきましたが、大別すると以下3つのスキルに集約されるかもしれません。
・生徒の学力を伸ばすスキル(ティーチング+コーチング)
・学習環境づくりのスキル(マネジメント+カウンセリング)
・自分の時間を作るためのスキル(事務処理+コミュニケーション)
学力を伸ばすには、教員自身の「ティーチング」と生徒をやる気にさせる「コーチング」。また、生徒がのびのび勉強するには、教員が「マネジメント」によってクラス全体を見て、トラブル時は個々のケア(カウンセリング)もしてくれるという安心感が重要。
そして、そんな2つのスキルを磨くために必要な時間を生み出すのが「事務処理能力」と「コミュニケーション」です。
スキルアップに必要な”現在地の確認”
大別した3つの能力は、それぞれが関係し合いどのスキルも必要とされているため、バランスよくレベルアップしていく必要があります。
その際に重要なのが、まず現時点でのスキルや力量を知ることかと思います。今後、磨いていこうとするスキルがあっても、自身のできるできないが曖昧では、何が学びとなったかわかりません。
ただそうはいっても、なかなかそれを測ることは難しいところですが、まずは各スキルに対してどれくらい勉強してきたか。そして、これまでの経験などから、他の先生に教えられそうな取り組みや工夫があるかといった視点で整理してみるといいかもしれません。
ティーチングやマネジメントなどについて、書籍やセミナーで学んだことを日々の実践の裏付けにできているか。なんとなくしていた行動も、どんな理由・背景があってそうしているのか、といった点が自分で明確かどうか。
それらを踏まえて、自信を持って取り組めていることと、まだ手探りの状態である分野を分けて把握することがスキルアップへの第一歩になるはずです。
まずは、「忙しくて時間がない」という状況の中でも、仕事終わりや帰宅時間に5~10分振り返りの時間をつくる。
そして、インプットとして各スキル・分野に関連する書籍を何冊読んできたか、自発的に参加したセミナーや研修が何回ほどあるかを定量的に記録。
そこからアウトプットとして、どんな行動につなげられているかを整理する、といった流れで棚卸しができればいいかもしれません。
教員に求められるスキル・役割の変容
今回あげたスキルは、どれもあくまで”現時点で”必要とされているスキルでしかありません。
今後、ITやテクノロジーが教室に入り込むことで、教員の役割は徐々に変わっていくとされています。
特に「ティーチングスキル」に関して、「教える」ことはWeb上にある教材やコンテンツを用いて行い、教員はそのテクノロジーと生徒をつなぐファシリテーターとしての役割が期待されています。
現在、教育のIT化に向けた環境整備(文部科学省資料)が全国の学校で進められており、否応なくテクノロジーの普及が広まっています。そんな中、今回あげたスキルに加えもう1つ注目すべきなのが「ITリテラシー」です。
ITと聞いて、「苦手だから」「やったことがないから」で避けられる状況ではなくなってきているのが現状です。いかにして一人ひとりがリテラシーを高め、教育系アプリやWebサービスを使いこなしながら、自身のスキルを底上げしていけるかで、生徒たちに提供できる知識や体験の幅が変わってきます。
こうしたことは、教員の方の努力はもちろんですが、自分含めEdtech界隈の人間が、いかに理解を得ていただけるよう情報発信していけるかも大切だと感じています。
忙しい先生方が、時間を割いてまで学ぶメリットはあるのか、またその活用の仕方など、個人レベルでお伝えできることから共有していければと思います。
確実に変容していく教育現場に対し、従来のスキルに加えて、新たに必要となるスキルにも関心を持ちながら、その準備を進めてもらえる環境を整えていきます。
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